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「校歌の質問はタブーなのか…」迷う現地記者に京都国際の選手・スカウトが口を開いて…「学校に言うても動かないし」高校野球ウラ話
posted2024/08/25 11:02
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Hideki Sugiyama
夏の甲子園を制した京都国際。その盤石の強さとともに話題を集めたのが、校歌である。「選手や監督に質問をしていいものなのか」。現地記者が京都国際に密着した。【全3回の1回目】
◆◆◆
衝撃という言葉では足りなかった。
8月17日の3回戦第2試合、京都国際が西日本短大附に勝利した。前奏を聴きながら、ベンチ裏のミックスゾーンへ移動するためにスタンドを後にしようとしたときだった。
「校歌について、聞いてもいいの?」
背中から、聞こえてくるはずのない言語が耳に入ってきた。まったく予期せぬ響きに思考が追いつかない。アイスコーヒーだと思ってウーロン茶を飲んでしまい、一瞬、何の飲み物だかまったくわからなくなる感覚と似ていた。
徐々に冷静さを取り戻す。
韓国語? なんで?
ミックスゾーンへたどり着くなり、旧知の記者に尋ねた。
「京都国際の校歌って、韓国語なの?」
すると、こう呆れられた。
「何を今さら……」
京都国際が初めて甲子園の土を踏んだのは2021年の選抜大会だった。そこで初勝利を挙げ、続く夏も甲子園に出場し、今度は3勝した。
3年前は新型コロナの影響で厳しい入場制限がかけられていたとはいえ、すでに4度、韓国語の校歌が甲子園に流れ、それなりに話題になっていたようだ。
私はいずれの大会も取材に行ってない。しかも、その年は大きな週刊誌連載の原稿に追われ、ほとんどテレビも新聞も見ていなかった。そのため、まったく知らなかったのだ。
好奇心をそそられ、その記者に重ねて質問した。
「校歌について、聞いてもいいものなの?」
「いいんじゃないですかぁ~」
京都国際の選手「歌えません…」
私は暇そうにしている選手をつかまえては校歌を歌えるのか、校歌の意味はわかっているのか、どんな学校なのか等々、矢継ぎ早に質問をした。