濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「引退発表」朝倉未来“衝撃のKO負け”はなぜ起きた? 平本蓮の“完勝だった138秒間”、RIZINの公開喧嘩が生んだ「リアルな現実」
text by
![橋本宗洋](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/3/e/-/img_3e695eddb40b312a8b8e4e58a09cfcd013505.jpg)
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2024/07/29 13:30
![「引退発表」朝倉未来“衝撃のKO負け”はなぜ起きた? 平本蓮の“完勝だった138秒間”、RIZINの公開喧嘩が生んだ「リアルな現実」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/2/7/700/img_277366fa00cd93053d741879163704e41466286.jpg)
平本蓮の左ストレートが朝倉未来の顔面を捉えた瞬間
呆然とした表情だった未来は、試合後もノーコメントで…
単に成長したということではなく、平本はその結果としてファイトスタイルそのものを変貌させていたのだ。未来は“待たない平本”に倒された。呆然として動けなかった試合後の未来。本人だけでなく、誰にとっても想像の範囲外の結果だった。
未来はノーコメントで会場を後にしている。試合前の言葉をそのまま受け取るなら、彼は引退だ。しかし他ならぬ平本が「引退しないでほしい」と言う。
「僕が引退撤回したんだから、あなたも引退撤回してください」
ADVERTISEMENT
闘い続ければ、いずれまた試合することもあるかもしれないと平本。彼にそう言わせたのは「朝倉未来の人間力」だという。
「それは試合する前から感じてたし、試合の中で感じた部分もあるし。絶対、復活すると思います」
あまりにも残酷な、それこそ選手人生にも関わるような負けを喫して、だからこそ存在が大きく感じられる。そういう面も格闘技にはある。「こんな負け方したら終わりだろ」ではなく「こんな負け方したままで終われるのか」と。
引退撤回はなし…それだけ重い敗北だった
榊原CEOは、時間はかかるかもしれないし奏功するかは分からないが、現役続行のための説得をしたいと言う。
「これだけのファンを(負けて)地獄に突き落として、それで終われるのかと。未来はこのままリングに戻らないと決められる男ではないでしょう。RIZINがここまで来たことに関して、朝倉未来には感謝しかない。同志として何か声をかけたい」
那須川天心はSNSに「引退しましょう 1、2年だけ」と記した。
これで未来はオープンフィンガーグローブでのキックボクシングマッチを含め3連敗。日本で最も有名なMMAファイターが味わったのは、榊原の言葉を借りると「リアルな現実」だった。切なくて儚くて、ゆえに目が離せない現実だ。
試合翌日、未来はSNSを更新。今後も練習や選手のサポートなどで格闘技には関わるが「自分が闘うのは一旦終わりにします」と表明した。「一旦」というところに含みはあるものの、正式な引退発表と捉えていいだろう。
引退撤回はなかった。未来にとって、それだけ重い敗北だったのだ。SNSでの表明で、彼は「格闘技が人生だったと思う」と率直に書いている。何不自由ない生活を送りながら、試合になればきつい練習や減量と向き合ってきた。「好きなんですよね、格闘技が」と語っていたのを思い出す。
この試合には勝者にも敗者にも物語があった。緻密な技術と作戦が張り巡らされており、結果として残酷なコントラストが観客を飲み込んだ。そのドラマはやはり“格闘技”だからこそ。単なる“喧嘩”ではなかったのだ。
![](https://number.ismcdn.jp/common/images/common/blank.gif)