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井上尚弥の初体験…ネリに奪われたダウンの真相を語る! その瞬間思ったのは…「テンション上がりましたね。ワクワクしましたよ」
posted2024/06/03 17:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
【初出:発売中のNumber1097号[ロングインタビュー]井上尚弥「もっと強くなれる手応えを得て」より】
1ラウンド目の出だしは決して悪くなかった
――試合の話を聞かせてください。戦前にどのようなファイトプランを描いていましたか。特に試合の入り、どのようなことを意識していたのでしょうか。
「ネリの戦い方は限られているんです。もともと攻防が一体化していなくて完全に分かれている。ネリがやることは分かっていたので、そこで自分がどう対処するかが問題でした。だから試合の流れは自分次第。そう思って試合に臨みました」
――ネリは前に出て、できるだけ連打をまとめたかったと思います。
「接近戦に持ち込んできて、左右のパンチを振ってくる。ネリって突破口はだいたい同じなんです。左のオーバースイングから入ってきて、そこから右に、連打につなげていく。そういう想定のもと、自分の1ラウンド目の出だしは決して悪くなかった。あらためて見返してもそう思います」
――右の強打を思い切り振り下ろしました。
「あれはあれで作戦なんです。ただ、みなさんのユーチューブの解説とか、SNSの感想を見てみると、1ラウンド目は硬いとか、大振りだとか、そういう意見が多い。あれはあえて振りをデカくしてるんです。右をオーバーで叩きつけるというのは」
――空振りもありました。それでもあそこで強いパンチを打ち込んで、相手に印象づけることに意味があるということですね。
「ネリを勢いづかせないために一回止める必要があった。むやみに入ってきたら、こういうパンチあるよっていう。相手の中にそういう恐怖心を植え付ける。それがあるのとないのでは、変わってくるんですよ。 だからあえてああいうパンチを打ったということです」
――そして1分40秒あたりでダウンを喫しました。この事実が出だしの「硬い」という印象をさらに強めたように思います。
「あのダウンはやっぱりネリの実力なわけで、自分が硬かったからとか、気負っていたからダウンしたという訳ではないと思っています。もちろん、自分がていねいに戦っていたのかと言われたらそうではないし、2ラウンド目の戦い方を最初からしていたら、あのダウンシーンはなかったかもしれないですけど」
初体験のダウン。思い出したのは…
――日本中が凍りついたダウンでしたが、あれはネリのパンチが「意表を突いた」ということでしょうか。