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甲子園の風BACK NUMBER
大谷翔平のスライダーから「音が聞こえたんです。シュルルルって…」甲子園で花巻東を撃破も…大阪桐蔭“黄金世代”の副将が語る「衝撃の記憶」
posted2024/06/21 17:11
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
(L)JIJI PRESS、(R)KYODO
2012年3月21日。
この年の春のセンバツ甲子園、大会第1日目の第3試合は、5回を終え0-2。
中盤を過ぎ、大阪桐蔭は劣勢に立たされていた。
「気が付いたら、『もう5回?』って感じでした。チームとしては(先発の大谷翔平に)球数をできるだけ投げさせるという方針だったんですけれど、5回までは点が取れる気がしなかったですね」
だが、6回表に先頭の3番・水本弦が四球で歩き、4番の田端良基が中前にしぶとく落とすポテンヒットで無死一、二塁と大きなチャンスを作った。
そこで打席が回ってきたのが5番打者の白水健太だった。
「送りバントのサインが出たんですけど、あの時の送りバントほど緊張したことはなかったですね。足も手も震えていたんですよ。5回以降が勝負だと皆で言い合っていたので、絶対に決めないといけない状況だったので」
何とか犠打を決め、6番の安井洸貴の二ゴロの間に三塁走者が還り1点。さらに8番の笠松悠哉の適時二塁打で2点を挙げ、逆転。7回には田端の2ランが飛び出し、5-2と突き放した。
最初は「捕れるわ」と思ったはずの打球が…
だが、この試合で今でも鮮明に記憶しているのは、センターのポジションから見つめた2回に大谷が放った特大アーチだった。
「あの打球は、忘れもしないですよ。打球が飛んだ瞬間、最初は『捕れるわ』って思って後ろに走ったんです。でも打球がぐんぐん伸びていって……。『え、これどこまで行くの?』って。
自分はセンターなので(右翼席に飛び込んだ)打球が横からだったから余計そう見えたのかも知れないんですけれど、滞空時間が長く感じました。走っていって、気が付いたら目の前にフェンスがありました。外野がもし150mくらいあれば、捕れていたんじゃないですかね(笑)」