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「“アスリート妊婦”ってどうしたらいいの?」元なでしこDF岩清水梓が悩んだ“妊娠後の孤独”…「ずっと寂しかったんだ」気づいた本心 

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岩清水梓

岩清水梓Azusa Iwashimizu

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photograph byJFA/AFLO

posted2024/06/08 06:01

「“アスリート妊婦”ってどうしたらいいの?」元なでしこDF岩清水梓が悩んだ“妊娠後の孤独”…「ずっと寂しかったんだ」気づいた本心<Number Web> photograph by JFA/AFLO

2019年12月、妊娠休養期間の岩清水梓。この3カ月後に愛息が誕生する

 もちろん得た情報に準じて気をつけてはいたけれど、その直前まで試合に出てスライディングをしていたような特殊な妊婦には、すべてが「安静」に匹敵するような情報にしか見えなかった。とにかく、情報がない。“アスリート妊婦”が産後を見越してトレーニングをするには、どうしたらいいんだ?

 アメリカの選手はどうしていたんだろう? あんなに子連れの選手がいるんだから、きっと産前プログラムなどがあるはず。それでもやはり、自力の検索ではまったくたどり着けない。また、その当時はSNSもあまりやっていなかったので、それらしき海外などの情報に遭遇するといったこともなく、若干、途方に暮れていた。

孤独だった手探りのセルフトレーニング

 だからと言って、なにもしないわけにはいかない。私には、出産後に戦線に復帰するというミッションがある。運動もせずに普通に過ごしていてはダメなのだ。

 雲をつかむような手探りのセルフトレーニングは孤独だった。

 基本すべてが恐る恐る。妊婦さんならみんな感じると思うけれど、まず「安定期に入るまで安静に」って、どのぐらいのレベルの「安静」なのかがわからない。だからすべてが自己判断だった。

 重いもの持っちゃダメっていう人が、ダンベルを持っていいのだろうかと思いつつ、座ったままなら大丈夫かな、とか。腹筋は使わないほうがいいのかな、とか。できるだけ負荷をかけないで、足首や上半身のトレーニングをするなど、自分の知っている限りの知識をフル稼働させた。そんな恐る恐るのセルフトレーニングは、3カ月ほど続いた。

 今になって思えば、第二子を出産しているような人は、十数キロもの第一子を、妊娠中も抱っこしたりしているわけで、そこまでナーバスになる必要はなかったのかな、とわかる。負荷だって、きっと思っていた以上に余裕だったはず。でも第一子って、本当に、教えてもらえないと、不安だらけで全然わからないのだ。

「あぁ、うれしい!」やっと知ることができた情報

 そんななか、ようやく安定期に入り、妊娠5カ月が過ぎたころ、なでしこリーグの年間表彰式があった。私は光栄なことに「特別賞」をいただいた。そのために式が行われる会場を訪れたとき、そこで、私にとって運命的な出会いがあった。

【次ページ】 一人でのトレーニングは心細いし、ずっと寂しかった

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岩清水梓
日テレ・東京ヴェルディベレーザ
国立スポーツ科学センター

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