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「泣きたい。もういやだ」出産→復帰のはずが大ケガ…アイシング中に「抱っこー!」“ミニ怪獣”の息子に元なでしこDF岩清水梓は救われた
posted2024/06/08 06:02
text by
岩清水梓Azusa Iwashimizu
photograph by
Miki Sano
ひと言で言えば、最悪だった。泣きたい。もういやだ。やり切れない。
出産から、思っていたよりもだいぶ時間はかかったが、体もようやくアスリート仕様に戻り、実戦もしっかりこなして、やっと元の「サッカー選手・岩清水梓」になってきた実感があった。あとは2021年9月のWEリーグ開幕に合わせて調整して、いよいよ目標だった、産後初の公式戦に復帰する……はずだった。
息子を保育園に送り届けたのち、MRI検査で全治3カ月
開幕戦まであと1週間に迫った日のトレーニングで、最悪の事態は起こった。
トレーニング中、右足を投げ出してシュートブロックをすると、膝の内側に痛みが走った。その瞬間、なんとなくいやな予感がした。これはヤバいやつかもしれない、と。
翌日、いつものように息子を保育園へ送り届けると、その足で病院へ行き、MRI検査をしてもらった。先生から下された診断は、内側側副靱帯損傷。全治3カ月。やってしまった。
あー、いやだ。面白くない。これまで、どれだけがんばってきて、どれだけ開幕戦を楽しみにしてきたことか。ツイてなさすぎる。なんでよりによって、自分にとって一番大事なこのときなんだよ—。
同じリハビリでも、出産後にやってきたリハビリと、今回のリハビリでは意味合いがまったく違う。前者は、期間は長いけれど、自分が望んでやってきたリハビリだった。未来はわからなかったけれど、希望を胸に、少しずつアスリートに戻っていく体を実感しながら行うリハビリは楽しかった。つまり産後は、ポジティブなリハビリだった。
そういえばウチには「怪獣」がいた……よね?
だけど今回のはただの怪我。開幕に向けて、せっかく長い時間かけて体を作ってきたのに、台なしだ。同じリハビリでも、スタートがポジティブかネガティブかで、気の持ちようはだいぶ違ってくる。正直なところ、テンションは地に落ちてしまっていたが、怪我を治してリハビリをしないことには、夢の公式戦復帰は実現しない。
ここまできたら、やるしかなかった。
負傷した膝を固定してもらい、車で帰る。また3カ月、リハビリかぁ。ため息をつきながら、ふと思い出した。