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我が子を抱いてピッチへ「ごめん! 仕事なんだ!」元なでしこがママのスイッチを切った“職場復帰”ウラ側「ギャン泣きを聞きながら…」

posted2024/06/08 06:03

 
我が子を抱いてピッチへ「ごめん! 仕事なんだ!」元なでしこがママのスイッチを切った“職場復帰”ウラ側「ギャン泣きを聞きながら…」<Number Web> photograph by Miki Sano

なでしこジャパンやベレーザの名DF岩清水梓。息子の聖悟くんとピッチで嬉しそうな表情を浮かべる

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岩清水梓

岩清水梓Azusa Iwashimizu

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Miki Sano

 女性アスリートにとって、妊娠・出産は現役引退とイコール。日本のスポーツ界ではそれが当たり前という暗黙の了解があった。しかし、なでしこジャパンW杯優勝メンバーの岩清水梓さんには「わが子を抱っこして、ピッチに入場したい」という夢があった。出産のち競技という“職場復帰”への奮闘記『ぼくのママはプロサッカー選手: 岩清水梓の出産と子育てのはなし』(小学館クリエイティブ)より一部転載にてご紹介します。(全4回)
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怪我のリハビリを終え、ようやくその時が

 本当は、戻れるかどうか不安だった。

 産後のリハビリを経て、復帰後初めて公式戦のピッチを踏む機会となるはずだったWEリーグ開幕戦を前に、私は膝の怪我で離脱した。つかみかけていたものが、目の前で手からこぼれ落ち、落胆と、ふがいなさと、虚しさで、そのときは自分の感情が追いつかなかった。そしてまたリハビリ生活に戻るという現実が、ただただつらかった。

 そこから約3カ月。怪我のリハビリを終え、ようやくそのときが来た。

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 何試合か前からベンチメンバー入りはしていて、出番をじっと待っている状況だった。その日の試合も、後半に入ってしばらくしても声がかからず、「今日も出番なしかな」と思っていた。そんな矢先だった。監督から名前を呼ばれた瞬間、「おー! めっちゃ久々に出る!」と一気に体中の血液が駆け巡るのがわかった。

息子が2歳の誕生日の2日後…最高だな

 2021年11月20日。後半28分からの途中出場だったが、およそ2年2カ月ぶりに公式戦のピッチに立つことができた。試合は0─0で、点を取りにいかなければいけない状況だったのもあり、自分のなかでは大きな感動などはなかった。ただ、短い時間でも、自分のプレーをしっかり出せたと思う。「あぁ、長い間やってなかったけど、鈍ってないんだな」というたしかな手応えと感覚があった。うん、これならもうやっていける。

 出産の後、怪我もあり、当初の予定よりはだいぶ遠回りしたけれど、きちんとピッチに戻ってくることができたことに、ようやく心からホッとした気分だった。

 あとはそう、あの夢を叶えたい。

【次ページ】 スタメンを勝ち取るのは産後の大きな目標だった

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