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大谷翔平はなぜ米男性ファッション誌の表紙を飾ったのか? 背景にあったアメリカ社会の「MLBがつまらなくなった」批判、ファン高齢化 

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内野宗治

内野宗治Muneharu Uchino

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photograph byNanae Suzuki

posted2024/05/14 17:02

大谷翔平はなぜ米男性ファッション誌の表紙を飾ったのか? 背景にあったアメリカ社会の「MLBがつまらなくなった」批判、ファン高齢化<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

アメリカの老舗男性向けファッション雑誌『GQ』スポーツ版の表紙を飾った大谷翔平。その背景を読み解くと「MLBの危機」があった

 どこかノスタルジックに雰囲気に溢れた、アメリカントラディショナルを思わせるファッションに身を包んだ大谷の写真を眺めていると、不思議なことにアメリカ人は大谷に「古きよきアメリカ」のイメージを見いだそうとしているように感じられる。アメリカでは人種的マイノリティであり、時に差別の対象にもなってきた日本人、アジア人である大谷に。

「野球はつまらなくなった」その意味とは?

『GQ』の大谷特集は、もちろん単なる写真集ではなくて、同誌の記者であるダニエル・ライリーが大谷に独占インタビューした記事が掲載されている。インタビューは、日本でもおなじみの水原一平通訳(当時)を介して行われた。

 大谷の生い立ちから、大坂なおみや錦織圭ら世界的に活躍する日本の若いアスリートを取り巻く環境、さらには野球界の現状など幅広いテーマに話が及んだこのインタビュー記事のタイトルは「大谷翔平はいかにして野球を再び面白いものにしたか」。このタイトルは「かつては面白かった野球が、いつしかつまらなくなった」(でも、大谷のおかげでまた面白くなった)という書き手の認識を伝えている。

 では、かつて野球が「面白かった時代」とはいつの話なのか? そして野球のどこが、どうつまらなくなったのか?

平成初期頃にあった「野球の黄金時代」

 野球だけでなく映画への造詣も深いことがうかがえる筆者のライリーは「ハリウッドが野球にしか興味をいだいていないかのような時代」として、大谷がこの世に誕生する前、1980年代後半から1990年半ばに公開された野球をテーマにした数々の映画を紹介している。具体的には『ブル・ダーラム(さよならゲーム)』(1988年)、『メジャーリーグ』、『フィールド・オブ・ドリームス』(1989年)、『ミスター・ベースボール』、『プリティ・リーグ』(1992年)、『サンドロット/僕らがいた夏』、『ルーキー・オブ・ザ・イヤー(がんばれ!ルーキー)』(1993年)、『エンジェルス』、『リトル・ビッグ・フィールド』(1994年)といった作品群だ。

 野球に関する映画が次々生まれたこのころがライリーにとっては「野球の黄金時代」だったようで、その後は「野球がアメリカの文化的想像力の中で衰退をつづけている」とライリーは言う。

【次ページ】 野球への悲観論

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