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大谷翔平はなぜ米男性ファッション誌の表紙を飾ったのか? 背景にあったアメリカ社会の「MLBがつまらなくなった」批判、ファン高齢化
posted2024/05/14 17:02
text by
内野宗治Muneharu Uchino
photograph by
Nanae Suzuki
米老舗雑誌『GQ』の表紙を飾った価値
″How Shohei Ohtani Made Baseball Fun Again″(大谷翔平はいかにして野球を再び面白いものにしたか)
2022年1月、アメリカの男性ファッション誌『GQ』スポーツ版の表紙を大谷翔平が飾った。『GQ』は1931年にアメリカで創刊され、現在は日本を含む21の国と地域で発行されている歴史と権威ある雑誌だ。″The Babe Ruth of Modern Baseball″(現代野球のベーブ・ルース)というキャッチコピーとともに、ノースリーブの白いニットから丸太のような太い腕を露出した大谷が、胸元にMVPトロフィーを抱えて白い歯を見せる。白いニットの襟と袖には赤いラインが入っており、同じく赤いエンゼルスロゴが入ったキャップとコーディネートされている。大谷を主役に据えたこの号のテーマは″The World’s Most Dominant Athletes″(世界の突出したアスリートたち)。野球に限らず、スポーツの歴史における偉大なアスリートたちを特集している。
『GQ』の表紙には過去、俳優のブラッド・ピットや歌手のジャスティン・ビーバー、NBAのレブロン・ジェームズら、世界中でその名を知られる錚々たるスターたちが登場している。スポーツ版とはいえ『GQ』の表紙を大谷が飾ったという事実は、大谷がアメリカでいかにビッグな存在になったかを物語っている。『スポーツ・イラストレイテッド』や『ベースボール・アメリカ』といったスポーツや野球の専門誌で表紙を飾ったことは過去にあったが、ついにハリウッドスターや世界的アーティストとも肩を並べたのだ。
ファッションの真意を読み解く
『GQ』はファッション誌だけあって、誌面を開くと普段のユニフォーム姿とは違う、スタイリストが選定したハイファッションに身を包んだ大谷の写真が並んでいる。ラルフローレンの白いシャツに、薄いグレーのニットベストという爽やかなプレッピースタイルの大谷。その姿のまま白いヘルメットをかぶり、それぞれ色みの異なる3本の木製バットを抱えてはにかんでいる「野球少年」風の大谷。一転して、カルバン・クラインの白いタンクトップ姿でクラブハウスにひとり佇み、ダンベルやバーベルに囲まれてトレーニング中の大谷。そして彼自身がアンバサダーを務めるヒューゴ・ボスの白いタートルネックを着用し、顔面を赤いキャッチャーマスクで覆い、その奥からいたずらそうに笑う大谷……。