Number ExBACK NUMBER
立浪和義はなぜ厳しい指導を貫けた? 本人が語る「原点」星野仙一、落合博満…冷徹と情熱の中日監督論「甘いだけで強くなるわけがない」
text by
喜瀬雅則Masanori Kise
photograph bySankei Shimbun
posted2024/04/17 11:01
最下位に沈みながら貫き続けた「厳しい」とも評される指導スタイル。就任3年目に結実しつつある指導哲学に迫った
「野球って最近、選手ファーストの時代、ってなって、WBCでもね。でも、あくまでも力のある選手が揃っているなら、それでいいと思うんですよ。自分が厳しいとか何とかだって言われますけど、自分なりに選手にはもちろん気を使ってやっています。ただやっぱり、甘いだけでは、今ドラゴンズはこんなに低迷しているのに、強くなるわけがないんですよ。やっぱり最低限の厳しさは、練習をやらせることも含めて、今のチームには必要だと思っています。負けるといろいろなことを言われるのは仕方ない。だけど、だから誰かのやり方を取り入れるとかそういうことじゃなくて、自分の考え、自分の方針がコロコロ変わってもいけないと思うんで、いいものはいい、悪いものは悪いとはっきり、選手には伝えるようにはしたいと思っています」
“頑固系”のリーダーが必要な状況
WBCでの栗山英樹、サッカー日本代表監督の森保一が典型例だろう。
選手をサポートする“伴走型”とでもいおうか。監督が前面に出てこない、むしろ部下たちと目線を合わせる“フラットな位置関係”は、かつてのカリスマ型とは対極にある。このスタイルが、部下からすれば「理想の上司」だと言われるのは当然だろう。
しかし、立浪の言う通り、そこに選手個々の高い技術レベルと自らを律する心、強い精神力が伴っていなければ、ただの“好き勝手”になる。
高木も、山田も、落合も、立浪を『個』として尊重してくれた。しかし、自主的に考えて動けるという、その一流レベルに達していないのであれば、星野のような“頑固系”のリーダーが、強引なくらいに引っ張り上げるような指導法だって、時には必要になる。
厳しさの裏にある立浪竜の覚悟
トップダウンの組織作り、つまり細かく、厳密に指示を送って部下を動かす「マイクロ・マネジメント」では、令和の新時代に通用しないといった外野の声は、立浪の耳にも聞こえている。しかし、そんなことは立浪だって百も承知なのだ。
今の中日の“チーム力”では、WBCで見せた「栗山式」は通用しない。個の力に任せられるだけのレベルに達していないという、立浪の見解にはうなずける部分が多い。
立浪は、嫌われても、それをやろうとしている。
それが、ドラゴンズの復権のためには不可欠な要素だからだ。
昨夏、SNS上で大きな話題を呼んだ「あのこと」も、このマネジメントスタイルに繋がってくる、一つの現象だったのかもしれない。<つづく>