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ドジャース・野茂英雄「野球を楽しみたい」発言に「日本メディアの8割が怒った」…初代通訳・奥村政之が振り返る「1995年のトルネード旋風」 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byKoji Asakura

posted2024/02/24 11:06

ドジャース・野茂英雄「野球を楽しみたい」発言に「日本メディアの8割が怒った」…初代通訳・奥村政之が振り返る「1995年のトルネード旋風」<Number Web> photograph by Koji Asakura

記者会見で隣に座る初代通訳の奥村政之。間近で見守ってきた奥村は当時のトルネード旋風をどう見ていたのか

「僕は野球を楽しみたい。この試合を楽しみたいです」

 その言葉が、奥村氏は今も記憶にはっきりと残る感慨深い思い出だという。

日本メディアの8割は怒っていた

「当時は今と価値観が全く違って、スポーツ選手が試合に臨むのに『楽しむ』なんて言ってはいけないような風潮でした。だからその言葉に日本メディアの8割は怒っていた。アメリカをぶっ潰せ! 世界に野茂の力を示してくれよ! もっとやる気出せ! ってね。でも逆に1割くらい『これが新しい時代のあるべき姿だ』と書いたメディアもいました。まだ勝利至上主義のようなところがあった日本のスポーツ界を、あの言葉が変えたと僕は思っています」

奥村さん、ペドロに聞いてもらえますか?

 野茂の言葉には“序章”があった。オールスター会見から遡ること3カ月、オープン戦中の出来事だ。野茂は同僚のドミニカ人右腕、ペドロ・アスタシオが先発した試合を見ていた。ペドロは序盤からあっけなく打ち込まれ無惨なKO。ところが、クラブハウスに戻ってくると、荒れるでも落ち込むでもなく、ニコニコと陽気にチームメートと談笑していたのだ。

「それを見た野茂が僕に言ったんです。『奥村さん、ペドロに聞いてもらえますか? 今日のピッチングは良くなかったのに、打たれた直後でどうしてそんなに楽しそうにできるのか。僕だったら落ち込んじゃうのに……』って」

打たれたくらいで落ち込んでいられない

 奥村氏を通じて野茂から質問を受けたペドロは、目を丸くしてかぶりを振った。

【次ページ】 日本のスポーツ界の価値観も変えた

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