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遠藤航の代役不在、“世界基準”ゆえの縛り…中村憲剛が切り込む“森保ジャパンの敗因”「アジアの戦いは難しい、で終わらせてはいけない」 

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中村憲剛+戸塚啓

中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2024/02/07 11:03

遠藤航の代役不在、“世界基準”ゆえの縛り…中村憲剛が切り込む“森保ジャパンの敗因”「アジアの戦いは難しい、で終わらせてはいけない」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

アジアカップで全5試合にフル出場したキャプテンの遠藤航。中村憲剛氏は疲労の蓄積やコンディションのバラつきを論点のひとつにあげた

 それに対して日本は、前回も解説したように決勝まで勝ち上がる前提でピーキングをしていたのではないでしょうか。開幕時点で26人のコンディションにバラつきがありましたから、グループステージの苦戦は想定内だったでしょう。しかし、三笘薫が戻ってきたら今度は旗手怜央がケガで離脱するなど、最後まで26人が揃いませんでした。

 森保一監督は「みんなでバトンをつないで勝つ」と選手たちに話し、試合ごとに先発に手を加えていきました。しかし、キャプテンの遠藤航は5試合すべてでフル出場しました。そもそも今大会には、ボランチが本職の選手は3人体制で臨んでいました。遠藤は外すことのできない選手ですが、彼の疲労を軽減するのは物理的に難しかったとも言えます。

 大会が進むにつれてメンバーが固定されていくのは、勝ち進んでいくうえで当たり前のことです。国際大会ですから、簡単に選手を入れ替えられないところもあります。

 そのなかで、遠藤を休ませられるほどの振る舞いができる選手が、果たしていたのか。

 フィジカルコンディションも含めて、26人全員がアジアカップという舞台で戦える状態だったのか。メンバーは過去最強に近いと言われていましたが、全員が最大値を出すことができ、チームがつねにいい状態だったかと言えば、5試合を通してそうではなかったと思います。

カタールW杯後に変化した日本の基本戦術

 アジアカップとW杯は違う、と言われます。

 では、何が違うのか。

 日本の立場が違うのです。

 2000年、04年、11年の優勝を振り返っても、楽な試合はひとつもありませんでした。簡単な大会ではないことは森保監督も、スタッフも、選手も、メディアも、ファン・サポーターも分かっていたのに、昨年6月以降の好成績で期待値がグンと上がり、日本国内だけでなく海外からも、優勝の大本命と見なされていきました。 

 このチームはカタールW杯を受けて、戦い方の「幅」を持つことに取り組んできました。

 世界のベスト16入りしたカタールW杯では、5バックでしっかりとした守備陣形を作り、良い守備から良い攻撃をする戦い方をベースとしました。W杯後は基本的に、その戦い方から離れています。

【次ページ】 アジアではなく「世界」を意識していた?

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