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「戦いたいのか? 走りたいだけなのか?」原晋は学連選抜の選手たちに投げかけた…まさかの総合“4位”、「寄せ集め集団」の逆襲はなぜ起きた?
posted2024/01/14 06:02
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Takashi Shimizu
青山学院大学を一躍、箱根駅伝の強豪校へと導き、今年の箱根駅伝でも総合優勝を成し遂げた原晋監督。就任当初、徐々にチームの実力を上げてきた原は関東学連選抜監督を務めることになる。今や伝説となった学連選抜での「4位」はどのように成し遂げられたのか。初出:『箱根駅伝 ナイン・ストーリーズ』(文春文庫、2015年12月刊)。肩書はすべて当時のもの(全3回の第3回/初回は#1へ)
就任4年目の2007年には、生活力の徹底によって予選会で次点まで這い上がった。そうなると、選手たちの間にも「みんなで箱根を目指そう」という意識が高まり、チームカがみるみるうちに上がっていった。
この予選会で次点となったことで、原にはひとつのチャンスが転がり込んだ。関東学連選抜チームの監督を務めることになったのだ。
原は学連選抜というチームに、情熱があった
学連選抜は知名度も高いが、チームを預かる監督にとっては「罰ゲーム」と評されることもある。箱根を走れない自分のチームの面倒を見るだけでも気がかりなのに、寄せ集めの選手たちでチームを作らなければならない。実際、選抜メンバーの5000mのタイムを足し上げると、本戦でも十分に上位に食い込むだけの力があるのに、シード権外でのレース展開となってしまうことが多かった。
原にとっては、初めて箱根駅伝で采配を振るチャンスがやってきた。学連選抜というチームに、情熱があった。
「預かったからにはしっかりやらないといけないと思いました。原という人間を陸上界で認めてもらうチャンスだとも思いました」
成功に必要な3つの力、生活力、チームカ、競技力のうち、「チームカ」を高める必要性を感じていた。
その集団で戦う理由がないなら、作ればいい
「学連選抜が弱い理由は簡単だった。その集団で戦う理由がないから。だったらその理由を作ればいい」
例年、学連選抜の最初の集合では、選手、スタッフが自己紹介をしてユニフォームの採寸、そしてマスコミヘのインタビュー対応で解散する。しかし原はいきなり、メンバー全員での長時間のミーティングを行った。