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「戦いたいのか? 走りたいだけなのか?」原晋は学連選抜の選手たちに投げかけた…まさかの総合“4位”、「寄せ集め集団」の逆襲はなぜ起きた?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTakashi Shimizu
posted2024/01/14 06:02
2008年の箱根駅伝、学連選抜の監督としてチームを4位(参考記録)に導いた原晋。箱根の歴史にはじめて名を刻んだ「伝説のチーム」の実像とは?
君たち、学連選抜で何をしたいの?
「君たち、学連選抜で何をしたいの? と問いかけたんです。記念? お祭り? 戦いたいのか、走りたいだけなのか。話し合ってもらうために、ふたつにグループ分けして目標を設定しました。そのなかでシード権だとか、3位を目指すという意見もありました。よし、君たちの情熱はわかった。だったら私も本気でやるから、練習をしっかり積んで欲しいと言い渡したんです」
寄せ集めのチームだから、一緒に寝起きをして生活力を高めるというわけにはいかない。全員が集まっての合宿は2回しか予定されていなかった。原は各大学の監督にマメに連絡を取り、「練習を本気でやらせてください。お願いします」と懇願した。
クリスマスイブに「もう一度、合宿をやりたい」
原が情熱を注いだことで、選手たちはたった一度のチームに対して「忠誠心」を醸成しつつあった。12月、千葉・富津で2度目の合宿をおこなう頃にはチームとしての力が増してきた。そこで原は、メンバーに「チーム名を決めよう」と提案し、再びミーティングを開いた。
「学生たちから出てきたのが、『JKH SMART』という名前でした。ジャパンのJ、関東学連のK、箱根のH。それに集まった大学の頭文字を取ったのがこのチーム名だったんです」
さらには12月24日、クリスマスイブの日に、学生たちから「もう一度、箱根の前に合宿をやりたいんです」という提案を受けた。原は「こりゃ、みんな本気になってきたぞ」とうれしかった。選手たちは学連選抜で走る意味を探る機会を原によって与えられたのだ。
「どうしてウチの選手を使わないのか?」に対し…
暮れの12月29日には、本戦での区間エントリーを行う。実は、学連選抜の監督を務める場合、学閥などによってしがらみが発生する場合がある。原のところにも、「どうしてウチの選手を使わないのか?」という質問が大学の指導者から寄せられた。