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妻＆母は猛反対、中国電力社員・原晋がそれでも青学大監督のオファーを受けた理由「陸上の夢を諦めきれなかった」「最初の数年間は“寮監”でした」
posted2024/01/14 06:01
中国電力の社員からいきなり青学大の監督となった原晋。一体、何が彼をそうさせたのか
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Nanae Suzuki
ビジネスマンとして活躍する原に舞い込んだオファー
「仕事で実績を上げ始めたところだったのに、青山学院大の監督の話を聞いた時に、心が動かされてしまったんです」
世羅高の後輩は大学時代にも競技で実績を残しており、卒業生の中でも発言力があった。大学を出てから彼は広島の放送局に勤務し原との交遊が復活していた。同じ釜の飯を食べた信頼感もさることながら、原が仕事で培った言葉の力や、会社内でビジネスチームを動かすマネージメント力が陸上でも応用できるのではないか――というのが後輩の“視点”だった。
もう一度、陸上の世界で認めてもらいたい
原はもう一度、陸上の世界に立ち返ろうと決心する。
「結婚もしていましたし、広島市内に家も買って、仕事にもやりがいを感じていました。でも、陸上で失格の烙印を押された原晋という人間を、もう一度、陸上の世界で認めてもらいたい。その欲求が眠っていたんです」
周囲には大反対された。
広島市内の家は住み始めてからまだ1年ほどしか経っておらず、ローンも払い始めたばかりだった。しかも、条件は3年契約。中国電力という一流企業を袖にして、飛び込む価値はあるのか。第三者からはそうは見えなかった。
「それでも、陸上の夢を諦めきれなかったんです。家族、会社の仲間にも頭を下げました」
誰もが反対だったし、原の母も最初は上京を止めていたが、最後の最後になって、「やるからには日本一になりなさい」と送り出してくれた。新居を気に入っていた妻も了承した。
陸上への情熱で、押し切ったのだ。
原が重視した3つの力
原にとって、初めての東京での生活が始まった。2004年の4月、原は青山学院大の監督に就任。自分の指導で青山学院大の陸上部を箱根へと導く。希望は膨らんでいた。
