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「原(辰徳)ともやってますが、実力は岡田が上だと」岡田彰布の“すでに名将”な早大キャプテン秘話「亡き友の心を震わせた言葉」とは
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/12/06 11:02
岡田彰布と原辰徳。阪神・巨人の象徴のような2人は、大学時代からライバルだったという
「1年生の岡田をキャプテンの八木(茂)と同じ部屋に入れて、英才教育をしたんだよ」
軽井沢合宿は120人の大所帯で、下級生は離れの大部屋での共同の寝泊り。一方でキャプテンは一人部屋が与えられた。そこで石山監督は岡田のリーダーとしての素養を早々に見抜いた。
島貫によると、翌年キャプテンになる山倉和博(のち巨人)も同部屋にいたのではないか、という。佐々木もこう語る。
「旅館の玄関を入ってすぐに階段があって、2階の和室の一つが監督、隣にキャプテン部屋でした。そこに有力な3年生、2年生も入っていて、そこに岡田も入れられました」
愚痴も言わずに、プレーそのもので引っ張る
昼間の練習でチームで一番多くのノックを受け、練習が終わってからは1年生なりの雑用がある。岡田は、キャンプが終わって十数キロ痩せたそうだ。その姿を見て、関口は〈この男は普通の選手と違う。こういうヤツがプロに行くんだ〉と感じていた。
「キャプテン部屋に入れば、僕らなら逃げ出したくなる(笑)。彼はしんどかったと思いますが、態度では表すこともない。1年生だけになるとふつうは弱音、文句を言いたくなるもの。でも、聞いたことがない。20歳前の精神的にも未熟な時期なのに、プロに行くんだという高い志がそうさせてたんだと思いますね。自ずと求心力なんて生まれてくるものではないですかね」
4年でキャプテンになるのはこの男、という雰囲気がその時点で醸成された。キャプテンは叱咤激励してナインを鼓舞して引っ張っていくタイプが一般的だが――関口によると口数の多くない岡田は、そうではなかったようだ。
「愚痴も言わずに、プレーそのもので引っ張る。当時としては珍しいリーダーでした」
片桐も円陣で何を言っていたか記憶にない、という。
「キャプテンとして勇ましい印象はなくて、静かに引っ張っていく感じです。余計なことを言って和ませることもなかった」
4年時には“こんな練習をしよう”と
最上級生になると同時に監督が石山から宮崎康之に代わった。新キャプテン岡田が率いる新チームは岡田と投手をのぞいて7人のレギュラーがこぞって卒業した。不安が叫ばれる船出と言っていい。だが、むしろその状況は発奮材料になったと関口は言う。
「前の年にみんな準レギュラーになっていて、次は出るという覚悟がありました。ノックも1球たりともおろそかにしなかった。〈岡田以外はダメだ〉と言われるのは面白くなかったですからね」
宮崎新監督は岡田に練習などを任せていた節があった。片桐も安部寮内で幹部が話しあっているところをよく、目撃したという。