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「恥辱だ恥辱、恥知らずめ!」ブラジルW杯予選3連敗+サポ流血など不穏な現場ルポ…「36歳メッシと王者アルゼンチン」にあって王国にないもの
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![沢田啓明](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAP/AFLO
posted2023/11/28 11:04
![「恥辱だ恥辱、恥知らずめ!」ブラジルW杯予選3連敗+サポ流血など不穏な現場ルポ…「36歳メッシと王者アルゼンチン」にあって王国にないもの<Number Web> photograph by AP/AFLO](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/d/3/700/img_d312560a53549066b314fcf48829294f252322.jpg)
メッシとカルロス・アウグストのデュエル。なぜブラジルはW杯南米予選で不振に陥っているのか
しかし、20分以上たってからアルゼンチン選手たちがピッチへ戻り、30分近く遅れて試合が始まった。
ただし、場内には忌まわしいアクシデントが起こったことによる不穏なムードが漂っていた。双方の選手が必要以上に激しいタックルや強いフィジカルコンタクトを繰り返し、主審がファウルの判定を連発する――。
試合前からリーダーシップを発揮したメッシは、例によってピッチを幅広く動いてボールを受けようとしていた。しかし、この日は(試合後に判明したのだが)右足の付け根付近を痛めていた。運動量が少なく、スピードも乏しい。ゴールから遠い位置からパスを出すことが多く、彼本来の華麗なドリブルや正確無比の左足からのシュートはほとんど見られなかった。
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前半だけで二度、アルゼンチンベンチに近寄って痛み止めのスプレーを吹きかけてもらっており、ベストコンディションとは程遠かった。しかし、逆に言えば、「いかなる状況でも、代表のために自分のすべてを捧げるのだ」という気持ちが感じられた。
勝利後、メッシらが敵地に駆け付けたサポの元へ
両チームともに前半は守備に重心を置いた戦いぶりだったが、44分、ブラジルがこの試合最初の決定機を作る。右サイドを崩し、ゴール前中央からガブリエル・マルチネッリ(アーセナル)がシュート。GKを抜いてゴールかと思われたが、右ポストの前へカバーに入っていたCBクリスティアン・ロメロ(トッテナム)が必死にクリアした。
ブラジルは後半13分にも左サイドを崩し、ゴール前正面でマルチネッリがシュートを放つも、今度はGKに阻まれた。
その5分後、アルゼンチンは左CKからのクロスをCBニコラス・オタメンディ(ベンフィカ)がブラジルのDF2人に競り勝ち、頭で叩き込んで先制した。
その後、アルゼンチンはメッシを下げて守りを固めると、ブラジルは後半36分、MFジョエリントン(ニューカッスル)がラフプレーで退場させられてしまう。以後は、アルゼンチンのゴールを脅かすことすらできなかった。
試合後、メッシらアルゼンチン選手が自国サポーターの陣取るゴール裏へ駆け寄る。両手を激しく振り上げ、飛び上がりながら「オレー、オレー、オラー」のチャント(注:「俺はアルゼンチン人だ。この熱い感情を抑えることなんてできないよ……」といった歌詞)をサポーターと共に歌って勝利を祝った。
それは、敵地で宿敵ブラジルを倒した喜びの発露であると同時に、試合前に理不尽な扱いを受けた同胞への労いでもあった。
史上初のW杯予選3連敗…ブラジルで猛バッシング
一方のセレソンは、W杯南米予選で「史上初の3連敗」、「史上初の4試合無勝利(1分3敗)、「史上初めてホームで敗北」という三重の屈辱を味わった。