熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「恥辱だ恥辱、恥知らずめ!」ブラジルW杯予選3連敗+サポ流血など不穏な現場ルポ…「36歳メッシと王者アルゼンチン」にあって王国にないもの
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAP/AFLO
posted2023/11/28 11:04
メッシとカルロス・アウグストのデュエル。なぜブラジルはW杯南米予選で不振に陥っているのか
2026年W杯南米予選は、第6節(全18節)を終えた時点で、アルゼンチンが5勝1敗の勝ち点15で首位。以下、ウルグアイ、コロンビア、ベネズエラ、エクアドルの順で、ブラジルはまさかの6位(全10カ国中)。
南米からの出場枠は6.5(注:7位の国は大陸間プレーオフを戦う)で、今の順位なら辛うじてW杯に出場できる、という状況にある。
試合翌日のアルゼンチンのスポーツ紙『オレ』は、殊勲のオタメンディが絶叫する姿をとらえた写真を一面に掲げ、「マラカナッソ(マラカナンの悲劇)だ。奴らは、棍棒をもってしても我々に勝てなかった」の見出し。試合前に両国サポーターが衝突した際、警備の警官がアルゼンチン・サポを暴力で制圧したことへの抗議の気持ちを込めた。
一方、リオの有力日刊紙『オ・グローボ』の見出しは「CBF(ブラジルサッカー連盟)とセレソンがその無能さで世界中に恥をかいた」。セレソンのふがいなさとCBFの不手際を批判した。
日刊紙『エストラ』に至っては「このプレー内容なら、セレソンはブラジルリーグでも降格の危険に瀕する」と辛辣だった。
セレソンが不調のどん底にある理由は簡単だ
セレソンが不調のどん底にある理由は、簡単に説明できる。
フェルナンド・ジニス監督(注:今年7月、来年6月までの1年限定で就任。来年7月からは、イタリア人のカルロ・アンチェロッティ=現レアル・マドリー=が采配を振る予定)の戦術は、最終ラインからショートパスを徹底的につないで攻め切る、という野心的なもので、チームで完璧な連携が構築されるまでは守備面のリスクが大きい。
この戦術をチームに植え付けるにはかなりの時間が必要なのだが、代表の練習時間は限られている。なおかつ、ジニスは世代交代を推し進めようとしており、17歳のCFエンデリッキ(パルメイラス)をはじめとする若手を大胆に起用する。これら二重の困難に喘いでおり、現時点では攻守両面でまだチームの体を成していない。
しかも、ネイマール(アルヒラル)、ビニシウス(レアル・マドリー)が故障のため欠場している。2人の穴は、どれくらい大きいのか――。
ネイマール不在については様々な意見が
ネイマールの不在に関しては、ブラジル国内で様々な意見がある。