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「恥辱だ恥辱、恥知らずめ!」ブラジルW杯予選3連敗+サポ流血など不穏な現場ルポ…「36歳メッシと王者アルゼンチン」にあって王国にないもの
posted2023/11/28 11:04
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
AP/AFLO
後半33分、1点をリードするアルゼンチンが手負いのエース、リオネル・メッシ(インテル・マイアミ)を下げて逃げ切りを図る。
その3分後、セレソンは9分前にピッチに立ったばかりのMFがラフプレーで退場処分を受けて10人となる。反撃の気運に水が差され、点を取るどころかシュートを放つことすらできない。
怒り心頭となった地元サポーターは、流行歌のサビのメロディーに合わせて「恥辱だ、恥辱だ、恥知らずたちめ」の大合唱(※ひいきチームが無残な敗北を喫しつつあるときの、ブラジル人サポーターの定番の歌)だった。
のみならず、アルゼンチン選手が自陣後方でパスを回すと「オーレ!」のコールを繰り返して怒りを露わにした。これは元来、スペインで闘牛士やフラメンコのダンサーを鼓舞したり賞賛するための掛け声だ。フットボールでは、通常はひいきチームが大勝していて余裕でパスを回している際に発するが、逆に手痛い敗北を喫しつつある際、相手チームのパス回しに対してひいきチームへの抗議の意味で浴びせることがある。
アルゼンチン国歌の吹奏にブーイングが
11月21日夜、リオのマラカナン・スタジアムで2026年W杯南米予選第6節のブラジル対アルゼンチンが行なわれた。スタンドは、約7万人の観衆で超満員だった。
ところが、試合開始直前、残念な出来事が起きた。
アルゼンチン国歌が吹奏されると、一部のブラジル人サポーターからブーイングが起きた。この反応に、片方のゴール裏に固まって陣取っていたアルゼンチン人サポーター(約2000人)が激怒。その周辺で小競り合いが起きた。
これを見て、ブラジルサッカー連盟(CBF)が手配した警備員に加えて地元警察の警官が急行したのだが、彼らが一部のアルゼンチン人サポーターに棍棒を振り上げて制圧しようとした(地元報道だと流血したサポーターもいたという)。
セレソン(ブラジル代表)が試合前の集合写真を撮った直後で、次はアルゼンチンが集合写真を撮る番だったが、選手たちはメッシを先頭にゴール裏へ駆け寄り、警官に激しく抗議する――。
手負いのメッシに見た「代表のために」
その後、選手たちはピッチへ戻ってきたが、プレーをするのではなく、ロッカールームへ引き揚げてしまう。場内は騒然とし、一時は「放棄試合か」とも思われた。