熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「競技人口は約1万人」ブラジルなど“ラグビー不毛のスポーツ強豪国”が本気を出したら…フットボールジャーナリストが考えてみた
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGaspafotos/MB Media/Getty Images
posted2023/10/28 11:03
日本との激闘を制し、その後準決勝でオールブラックスと対戦したアルゼンチン代表。彼らのような存在がラグビーを世界的競技にするのかもしれない
1999年大会でサモア、日本、アイルランドから勝利をあげて初めて準々決勝へ勝ち上がったが、フランスに敗れた。しかし、2007年大会でフランス、アイルランドなどを倒してプールステージを4戦全勝で突破すると、準々決勝でスコットランドを下して準決勝へ。南アフリカに敗れたが、3位決定戦で伝統国フランスを倒し、世界を驚かせた。
2011年大会でもベスト8入りすると、2015年大会では再びベスト4。そして、今大会でもベスト4入りを成し遂げた。
南米でアルゼンチンに次ぐのは、隣国にあって文化的、社会的に強い影響を受けるウルグアイだ。
予選を勝ち抜いて、1999年以降、5大会に出場。今年の大会ではナミビア(アフリカ)を倒したが、1勝3敗でプール4位で敗退。これまでW杯で4勝をあげているが、まだプールステージを突破したことがない。
“不毛の地”ブラジルの「競技人口は1万人程度」
チリは、今年の大会のアメリカ大陸予選プレーオフでカナダとアメリカを倒して悲願の初出場を果たした。日本と同じプールDに入り、いずれの試合でも闘志溢れるプレーを見せたが、4戦全敗で最下位に沈んだ。
一方、ブラジルはまだ世界のラグビー地図に存在しないも同然の国だ。
1964年からアマチュアリーグが開催されているが、他の南米諸国と同様、プロリーグはない。
1999年W杯以降、南米予選に参加しているが、一度も突破できていない。今大会も、南米予選でウルグアイとチリに敗れた。ただし、スコアはウルグアイに13-36、チリに13-23で、絶望的な大差で敗れたわけではない。
ブラジルのラグビー関係者によれば、「競技人口は1万人程度。現在の代表チームの選手の中ではフランスとポルトガルの下部リーグで2人ずつプレーしており、残りは全員、コブラスというサンパウロのセミプロクラブ所属」とのこと。「もし我々が本気にラグビーに取り組んだら、ブラジル人特有のテクニック、キック力、創造性を発揮して独特の魅力的なスタイルを作り上げるはず。国内での認知度を高め、競技人口を増やすためにも次のW杯にはぜひ出場したい」と語っている。
かつてフットボールも欧州と南米が中心だったが
当初、ラグビーは旧英連邦の国を中心に普及した。欧州ではフランスが例外的存在で、近年はイタリア、ジョージア、ポルトガルなどで普及、強化が進んでいる。中南米ではアルゼンチン、アジアでは日本が例外的な存在で、その他の国における普及、強化はまだまだこれからだ。