熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「競技人口は約1万人」ブラジルなど“ラグビー不毛のスポーツ強豪国”が本気を出したら…フットボールジャーナリストが考えてみた
posted2023/10/28 11:03
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Gaspafotos/MB Media/Getty Images
10月4日、フランスからブラジルへ戻ってきた。相変わらず、このフットボール王国ではラグビーへの関心が低い。
ケーブルテレビで、主な試合の中継は行なわれている。しかし、国民の大多数はラグビーに関心がなく、フランスでワールドカップ(W杯)が行われていることすらほとんど知られていない。(日本を除く)アジア、(南アフリカを除く)アフリカ、中米と並んで「ラグビーほぼ不毛の地」である南米で唯一、世界レベルに達しているのが、10月8日のプールD最後の試合で日本を39-27で下して決勝トーナメント進出を果たし、準々決勝でもウェールズを倒してベスト4に進出したアルゼンチンだ。
意外と知らないアルゼンチンとラグビー史
19世紀後半、英国人の鉄道技師、英語教師、商社マンらが首都ブエノスアイレスや北部の商工業都市ロサリオ(注:アルゼンチン代表FWリオネル・メッシの出身地だ)へやってきて、スポーツクラブを創設。クリケット、フットボールなどと並んでラグビー部門を設立した。また、英国系のエリート校が体育の授業で教えた。
1899年にブエノスアイレスとロサリオの5クラブがリーグを結成し、国内初のリーグ戦を開催。以来、毎年、リーグ戦を行なっている。現在は、3月末から11月中旬まで12チームがホーム&アウェーで対戦し、上位4チームが準決勝、決勝を行なう。ただし、純然たるプロリーグではなく、選手の大半は別に仕事を持っている。
これとは別に、国内リーグで力を付けたトップ選手の多くが欧州のプロクラブでプレーする(注:現在の代表選手は、1人を除いて全員が欧州クラブに所属する。国別の内訳は、フランス14人、イングランド11人、イタリア2人、日本、ウェールズ、スコットランド、イタリア、アメリカが各1人)。
ウルグアイもアルゼンチンの影響を受けている
アルゼンチン・ラグビー・ユニオンは1899年に結成され、1987年に世界のラグビー統括団体であるワールド・ラグビー・ユニオンに加盟した。
「ロス・プーマス」(ピューマ)と呼ばれる代表チームはフィジカルの強さと旺盛な闘志が特長で、1987年の第1回W杯以降、全大会に出場している。