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「競技人口は約1万人」ブラジルなど“ラグビー不毛のスポーツ強豪国”が本気を出したら…フットボールジャーナリストが考えてみた 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byGaspafotos/MB Media/Getty Images

posted2023/10/28 11:03

「競技人口は約1万人」ブラジルなど“ラグビー不毛のスポーツ強豪国”が本気を出したら…フットボールジャーナリストが考えてみた<Number Web> photograph by Gaspafotos/MB Media/Getty Images

日本との激闘を制し、その後準決勝でオールブラックスと対戦したアルゼンチン代表。彼らのような存在がラグビーを世界的競技にするのかもしれない

 ラグビーは非常にハードで選手の故障も頻発するスポーツで、多くても1週間に1度くらいの頻度でしか試合ができない。その反面、多数の選手を抱える必要があるため、完全なプロリーグを創設して安定的に運営を続けるのは決して容易ではない(注:現在、世界でプロもしくはセミプロのラグビーリーグは30前後と推定され、下部リーグを含めると200を超えると推定されるフットボールに遠く及ばない)。

 フットボールも、かつては欧州と南米が中心だったが、FIFAが普及に努力したこともあって北中米、アフリカ、アジアでも普及と強化が進み、そのことが世界全体のレベルアップと人気拡大につながっている。

もしブラジルが本気でラグビーに取り組んだら

 ワールドラグビー(世界のラグビーを統括する団体)もアメリカ大陸における普及と強化の重要性は理解しており、2020年、ブラジルを含む南米6カ国のクラブを集めてスーペルリーガ・アメリカーナ・デ・ラグビーというプロリーグを創設。2023年からアメリカも加えて6カ国7チーム(アルゼンチンだけ2チーム)に発展させた。そのことが南米におけるラグビーのレベルを徐々に押し上げており、今大会のアメリカ大陸予選では過去9大会出場のカナダ、8大会出場のアメリカを押しのけてウルグアイとチリが出場権を手にした。

 今回のW杯を見ていて、プレー面ではフランス、アイルランドのようにキックをパスとして有効に使うチームも一部にはあったが、もっともっとうまく活用できるのではないかと感じた。

 もしブラジルが本気でラグビーに取り組んだら、足先の器用さを利用してのキックパス、チップキック(自分で小さく前へ蹴って自らキャッチする)など精度の高いキックを有効に使い、フットボールでブラジル人選手がしばしば見せるノールックやわざと逆方向を見てからのパス、逆方向へのスナップスロー、体の後ろ側を通してパスを出す、といったトリッキーなプレーを連発して対戦相手を幻惑し、世界に例のないスタイルを創り出すのではないか、と夢想する(※このようなプレーは、手先、足先が器用な日本人も十分にできるだろう)。

日本もW杯で強豪国にしばしば大敗を喫した

 今後、ブラジルを含む中南米諸国、アフリカ諸国などが本気でラグビーに取り組んだら、世界のラグビー地図は激変するに違いない。

【次ページ】 強豪国となりつつある日本にも課題はありそう

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