オリンピックへの道BACK NUMBER

「勇大くんも来てくれるんじゃないかと」 東野有紗が明かす、渡辺勇大とのわたがしペア結成秘話…“余り者同士”の相性の良さは「奇跡ですね」 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byL)Asami Enomoto、R)JIJI PRESS

posted2023/11/11 11:00

「勇大くんも来てくれるんじゃないかと」 東野有紗が明かす、渡辺勇大とのわたがしペア結成秘話…“余り者同士”の相性の良さは「奇跡ですね」<Number Web> photograph by L)Asami Enomoto、R)JIJI PRESS

直近のアジア大会では銀メダルを獲得、来年のパリ五輪では金メダルへの期待もかかる東野有紗

渡辺勇大との出会いは「余り者同士」のペア

 そのとき、バドミントンへの向き合い方を変える転機があった。

「先輩と(女子)ダブルスをやらせてもらって、バドミントンの楽しさが広がりました。シングルスだと自分がミスしたら自滅して負けて終わりだけど、ダブルスはパートナーの力もプラスされて、自分が駄目でもパートナーが助けてくれたりするのがすごく楽しくて。自分1人の力じゃなく、力を合わせてやる種目ってすごく楽しいなって思えました。ダブルスの道だったら上を目指せるんじゃないかなって、ちょっとずつ不安は解消されたと思います」

 1人じゃない楽しさを知ったとき、もう1つの転機があった。中学3年生のとき、富岡高校・富岡一中の合同でインドネシアに遠征する。当地での大会でミックスダブルスに出場する際、組んだのは渡辺だった。

 東野は「余り者同士」と表現する。

「男女、強い者同士で組まされるじゃないですか。余った2人、最後に監督から発表されたのが私たちだったんです。監督は『そんなことない』って言ってたけれど(笑)。悔しさ? なかったです。すごい先輩と組まされるよりはいいかなと」

渡辺との第一印象「喋れない…どうしようみたいな感じでした」

 渡辺は1年後輩だった。

「勇大くんが入学してきて、最初に会ったときのことは覚えてないです。めちゃめちゃ細くてちっちゃかったのと、あまり喋らない子だなっていうイメージでした」

 組むことが決まっても、会話はあまりなかった。

「他の人たちは仲良くしているけれど、喋れない、どうしようみたいな感じでした」

 なかったのは会話だけではなかった。

「まったく練習もしてなくて、ほんとうにぶっつけ本番くらい」

 ところが出場した大会で、先輩たちや同年代のペアよりも好成績をあげたのだ。

「そのとき、勇大くんは腰を怪我していました。それなのにこんなにうまくいくんだ、お互いに無駄な動きがなくてスムーズにローテーションできるんだ、と思いました」

【次ページ】 高校卒業後も、東野は渡辺を誘い続けた

BACK 1 2 3 4 NEXT
東野有紗
渡辺勇大
富岡第一中学校
福島県立富岡高校
ジェレミー・ガン
潮田玲子
池田信太郎
高橋礼華
松友美佐紀
パリ五輪
東京五輪
オリンピック・パラリンピック

他競技の前後の記事

ページトップ