「昨季は日本のファンの人たちは別にして、僕がチームに残るなんて誰も思っていなかったでしょう。そういう状態からちょっとずつ、ちょっとずつ、成績が上がっていって、3Pで会場を沸かせるようになっていきました。それが今季は決めて当たり前というか、決めなきゃいけない状況です。

　もちろんプレッシャーですけど、ただここにいるのはそういうプレッシャーの中で常にやっているメンバーです。どういう状況でも決めきるのが良いシューター。それはそれで楽しんでやれたならと思っています」

　長いシーズン中に少なからずのアップダウンはあるはずだが、それでも今の渡邊の力強い言葉、漂わせている自信を頼もしく感じているファンは少なくないのかもしれない。紆余曲折を経てこの場所に到達したサウスポーは、実際に良い意味でかつてほどのガムシャラさを感じさせなくなった。もちろん力を抜くわけではなく、それでいて変に力みすぎるわけでもない。本人の言葉を借りれば、「100%の力でやっていますけど、空回りはせず、冷静に一生懸命できるようになった」という。

「人生の中で今が一番いいバスケができている」

　そういった境地にまで辿り着いた背景に、NBAでの過去5年間の経験と、これまでにないプレッシャーの中でプレーした今夏の日々があることは想像に難くない。

「年齢的なこともそうですし、やっぱり僕の人生の中で今が一番いいバスケットボールができていると思います。ここしばらくは（サンズでの）練習でもずっとよかったんで、評価もしてもらえていると感じています。W杯で得られたものっていうのは自分にとって計り知れないなと思っています」

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　グリズリーズ時代が力を蓄えるための時間で、ラプターズ、ネッツ時代は飛躍の季節だったとすれば――舞台が整って迎えるサンズでの2023-24シーズンは、おそらく渡邊にとっての収穫のシーズン。心技体が充実し、NBAでも勝者になるための基盤を得た渡邊は最高のタイミングで今季に臨もうとしている。

　これまでにない期待感、プレッシャー、そして自信とともに、本当に楽しみな開幕までもうあとわずかである。