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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
岡崎慎司37歳に聞いた、どの指導者のもとで勉強したい? 答えは「トゥヘルですね、やっぱり」「優れた監督というのは『納得のいくチーム作り』をする」
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2023/06/04 11:07
将来的な指導者挑戦も視野に入れる岡崎慎司。トゥヘルのもとで勉強したいという岡崎、その理由にはある体験があった
「相手の方が1人多い状況」で練習する意味
トゥヘルのトレーニングではサポートとして「フリーマン」が入ることがほとんどだったという。「フリーマン」とはボールを保持しているチームの仲間としてサポートし続ける選手のこと。例えば両チーム同じ人数でミニゲームをしているときに1人フリーマンが入ると、ボールを持っているチームは1人多い状況でプレーすることになる。こうした状況を快く思わない指導者もいる。「相手の方が1人多い状況なんて試合にはない」というのがその最たる理由だ。確かにそうなのだが、見方・考え方を変えると実はそうではない。
岡崎「ボールを持っていないチームは数的不利ということになるんですけど、試合中でもボールを取られた後は基本的に数的不利になるんです。奪った方のチームが前に出ていきやすい。そうなるとその瞬間は数的不利になる。だからフリーマンが入っていて、ボールを奪われた後の守備の仕方をどうするのか、というのを落とし込むうえで、とても意味のある練習にもなるんです。あとカウンターにおける数的有利時の練習にもなるじゃないですか。だからトゥヘルはそのフリーマンを毎回トレーニングで絶対入れたのかなと。
あとはボールを自分達で回すときは数的有利な状況が多いから、フリーマンをコート外に配置して“壁あり”のポゼッションみたいなトレーニングをすることが多かったですね。そういうのを考えながらトレーニングしていくと、試合の中におけるポジション取りがうまくなっていく。そしてチームとしてのポジション取りが、みんな共通意識でできるようになっていくんです。『お前は絶対ここにいろ!』みたいな教え方じゃなかったのが僕にはよかったですね。そういう指導を受けたこともありましたから」
“納得いく感”っていうのは、良い監督であればあるほどあった
監督には様々なタイプがいるし、取り組み方もアプローチの仕方もそれぞれに強みと弱みがある。チームとだけではなく、クラブが持つビジョンやコンセプト、伝統とかみ合うかどうかも重要だ。そうした中で、監督の重要度がどんどん増してきていると岡崎は強く感じているという。
岡崎「世界のサッカーがどんどん速くなってきてて、いろんなタイプの選手がいるなかで、どんな選手をどのようにチョイスして、起用するかで監督の色がこれまで以上に出てくる。その中で、損する選手も得する選手も出てくる。それはいつの時代、どのリーグでもあることだと思うんですけど、その中でもより良い優れた監督というのは『納得のいくチーム作り』をするなと感じています。なぜかというところで説得力がちゃんとある。“納得いく感”っていうのは、良い監督であればあるほどあった。
選手からしたら、監督に選ばれないときにそれが全然基準がない中でそうだったとしたら、もう運が悪かったなと思うしかない。そうした状況だとチームはやっぱり勝てないし。だから、どのチームというよりもどの監督とやるのかっていうのは、これから先、日本人にとってめちゃくちゃ重要になってきてるなと思います。そういったところも見ていかないといけない。監督の構想に入ってない選手は本当に全然使ってもらえないし、特徴すら見てもらえない。そうなるとどんなに頑張ったところで厳しい」