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なぜフランス初陣で初ゴールを決められたのか…鈴木唯人21歳が試みる意識改革「パスで逃げていたら何も変わらない」〈パリ世代インタビュー〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2023/04/25 11:01
ストラスブールにて奮闘するパリ世代の鈴木唯人。鮮烈な初ゴール前のタイミングでインタビューに応じてくれた
日本人にとってフランスリーグが身近に感じられるようになったのは、2004年の松井大輔の挑戦からだろうか。
以降、中田浩二、酒井宏樹、長友佑都、植田直通、昌子源、伊東純也、南野、そして今、鈴木のチームメイトである川島永嗣……といった代表戦士たちがプレーしてきた。黒人選手の多さゆえに、フィジカルとスピードがモノを言うリーグという印象があるが、鈴木がさらに深く掘り下げる。
「サッカーの本質を捉えている、という言い方ができると思いますね。それが、このリーグでプレーする選手たちのハングリーさと結びつくのかなって思うんですけど。とにかく結果がすべて。ゴールに直結した動きが評価される。日本だと僕は間で受けてターンして、パスを捌いて出ていく、といったプレーをよくしていましたけど、こっちだと間がないというか。相手はマンツーマンで潰しにくるので、そこでいかに剥がして、ゴールに向かっていくかが求められるんですよ」
“これ”という武器を持ってないとダメだなって
チームを率いるのは、98年から99年にかけてガンバ大阪の指揮を執った経験のあるフレデリック・アントネッティである。若き日の稲本潤一や宮本恒靖を重用した指揮官からは「まずは慣れることが大事だ」と声をかけられているが、慣れるべきはフランスリーグのフィジカルやスピードだけではない。
「自分が何を求められているのか、何をやらなければならないのか、こっちの評価基準に慣れることも大事。傍から見ていて悪くないプレーをこなしていたら、日本だと『徐々に馴染んできたな』っていう評価になると思うんですけど、こっちだとそうはならない。“これ”という武器を持ってないとダメだなって。2トップの一角に入ってトップ下のような役割を担っている自分の場合、ゴリゴリ行って相手を剥がせないといけない。監督に『この選手を使ったら、こういうことが期待できるな』って思わせられるかが大事なんで」
勝利に貢献するのが大前提で、強引に
試合出場から遠ざかっていた日々の中で貴重な場となったのが、3月下旬に行われたU-22日本代表のドイツ戦、ベルギー戦だった。
24年のパリ五輪を目指すこのチームの主力である鈴木にとって、欧州移籍後初の代表活動となったこの遠征で、心に決めていたことがある。