Jをめぐる冒険BACK NUMBER
なぜフランス初陣で初ゴールを決められたのか…鈴木唯人21歳が試みる意識改革「パスで逃げていたら何も変わらない」〈パリ世代インタビュー〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2023/04/25 11:01
ストラスブールにて奮闘するパリ世代の鈴木唯人。鮮烈な初ゴール前のタイミングでインタビューに応じてくれた
多少強引であってもゴールに向かって仕掛けていく――。
「チームの勝利に貢献するというのが大前提で、自分としてはトライの場だと考えていて。もしかしたらパスをしたほうがいい場面もあったかもしれないですけど、行けると思ったら突っ込んでいく。実戦で突っ込んでみないと感じられないことがあるし、自分はそこで何かを掴みたかった。武器を作っていくためにも、今の自分がどんなものなのかを感じ取るためにも、強引にプレーしました」
直線的にゴールを目指すマインドが奏功したのか、3月27日のベルギー戦ではドリブルでペナルティエリア内に持ち込むと、やや遠めから思い切って右足を振り抜き、ファーサイドネットを射抜いてみせた。
「パスで逃げていたら何も変わらない。行かないという選択を一度しちゃったら、感覚的に行けなくなる。正直、パスを出すことはいつでもできると思っているんで。久しぶりの試合だったから、高望みもしてなかったですし、すべてがうまくいくとも思ってなかった。それでも試合から遠ざかっている中で、あれくらいスルスル行けるなら、試合勘を保った状態なら、前よりもスルスル行けるなって。普段から日本ではやれないようなデッカい選手たちと練習しているぶん、足の出どころとか、体の入れ方とか、言葉じゃうまく説明できないんですけど、体が覚えていましたね」
主張しないと“現状に満足している”って思われる
代表戦をチェックしてくれたアントネッティ監督からはプレーを評価されたが、それでも公式戦での出番は回ってこなかった。
むろん、鈴木も黙々と自己鍛錬のみに励んでいるわけではない。指揮官のもとを訪れ、自己主張を何度も繰り返した。
経験豊富な“最高の通訳”を伴って――。
「今日も永嗣さんに付いてきてもらって、『どうしたらいいのか?』って聞きに行きました。こっちでは自分の考えを主張しないと、現状に満足しているって思われるんで、しつこいくらい行くようにしています。監督からは『攻撃面でいいものを持っているのは分かっている』と。『パワーやインテンシティをもっと求めたいし、守備でももっと存在感を出してほしい』と言われていて。それは絶対に必要なことだと思うんで、克服していきたいし、攻撃でも淡々とやるんじゃなく、粗くてもいいから自分を出していきたいですね」
エスパルスでの最後は、反省があって
もともと、指揮官に対して自分の意見を主張するタイプだ。エスパルス時代の20年シーズンには高卒ルーキーだったにもかかわらず、ピーター・クラモフスキー監督に「なぜ、使ってもらえないのか」「どうしたらいいのか」と、積極的に聞きに行っていた。
だが、振り返ってみると、ストラスブール加入前の半年間は、そうした姿勢が薄れていた。22年シーズンの後半戦、過去2年半はチームの主力だった鈴木は、ベンチを温める存在になっていた。
「エスパルスでの最後は、自分の中で反省があって。あれを繰り返しちゃダメだなって……」
<後編につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。