Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「俺、大丈夫か?」パリ世代・鈴木唯人がフランスで続ける自問自答「市船、エスパルスのときもそう。だから、ストラスブールでも一番に」
posted2023/04/25 11:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
AFP/JIJI PRESS
今の時代、海外でのプレーを目標に掲げる若いJリーガーは珍しくない。
なかには「夢はチャンピオンズリーグ優勝」ときっぱり言い切る野心家もいるが、今年1月27日に清水エスパルスからフランスのストラスブールに移籍した鈴木唯人は、そうしたタイプではない。
「将来のビジョンはけっこうぼんやりなんですよ。もちろんプロになったときから、いつかは海外でやりたいと思ってましたけど、プレミアに行きたいとか、W杯に出るとか、自分から口にしたこともないですし……。ただ、チャレンジしたいっていう思いが自分の中で明確に強くなった時期があって」
A代表の合宿は「レベルが高くて、楽しかった」
それは、プロ3年目となる22年シーズンの1月――。
中国、サウジアラビアとのカタールW杯アジア最終予選を控えた日本代表は、ウズベキスタンを招いての親善試合を予定していた。
外国人の新規入国停止の影響でゲームは中止となってしまったが、この一戦に向けた合宿に、鈴木は同じくパリ五輪世代の松岡大起、西尾隆矢、荒木遼太郎とともに招集され、日本トップレベルの洗礼を受けた。
「とにかくレベルが高くて、楽しかったんですよね。みんなうまいし、スピードもインテンシティも全然違う。こういうレベルの中に毎日身を置くと、成長速度も違うだろうなって。大迫(勇也)さんとかから向こうの話も聞いて、参考になることばかりで。俺も早く、海外に行きたいなって」
この合宿中に鈴木は「一番違うのは考えるスピード、判断のスピード。でも、それに慣れればやれると思う」というコメントを残したが、わずか5日程度の代表合宿がいかに刺激的だったかは、エスパルスのプレシーズンキャンプに合流したあとのパフォーマンスが証明していた。
ただ、人間って慣れていく生き物なんだなって
トレーニングや練習試合で外国人選手に当たられても跳ね返すばかりか、そこからグッと前に出ていく――。
そんな力強いプレーに、当時チームを率いていた平岡宏章監督は、こう称えた。
「ひと回り大きくなって帰ってきた。その姿を見て、これは凄いことになるんじゃないか、と」
実際、22年シーズンが始まると、鈴木は開幕から2試合連続ゴールと、気を吐いた。
自身の覚醒を振り返り、鈴木は微笑む。