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高校サッカーや三笘薫ら輩出の大学、Jユースからどう超一流を生むか…育成経験指導者や三都主アレサンドロも感じる“長所と短所” 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/01/14 11:03

高校サッカーや三笘薫ら輩出の大学、Jユースからどう超一流を生むか…育成経験指導者や三都主アレサンドロも感じる“長所と短所”<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

毎年恒例の全国高校サッカー選手権。育成年代について考えていくことも、日本サッカー強化への指針となる

三笘薫ら大学経由パターンの利点と課題とは

 前述した通り、日本サッカーでは大学を経由してプロ入りするパターンがある。カタールW杯で言えば三笘薫がアタッカーとして大活躍し、守田英正もポルトガルの強豪クラブであるスポルティングに在籍している。

 さらに伊東純也、シュミット・ダニエルに谷口彰悟、山根視来、長友佑都、相馬勇紀、上田綺世といった選手たちも大学経由でプロ入り、そしてW杯メンバーとなった。

<大学の体育会>
【長所】

1)高校卒業直後にプロになれなかった選手でも、大学で成長することでプロになる夢をかなえられる可能性がある。

2)大学で学ぶことは知的、人間的な成長という面で大きな価値があり、大卒という学歴を手にすることは引退後のキャリアにおける選択肢を広げる。

3)プロ選手を多く輩出する強豪大学では練習施設がかなり充実しており、優秀な指導者もいる。

4)公式戦に出場して試合経験を積むことができる。

 高校を出てすぐにJクラブに入団しても、即戦力となれる選手は稀。試合経験を積めず、伸び悩む選手が少なくない。大学の公式戦に出場する方がプレー経験を積める可能性がある。

【短所】

1)プロでプレーできるレベルに達しても、卒業まで待たなければならないことが多い。

 「<中学、高校の部活動>の短所4)」と同じ問題だ。

 例として、守田英正のケースで見てみよう。

 守田は流通経済大学4年時に川崎への入団が内定し、特別指定選手となった。そして、2018年に川崎フロンターレに入団するとすぐにレギュラーとなり、2年半プレーした後、2021年1月、ポルトガルのサンタクララへ移籍。ここでもすぐにレギュラーとなり、昨年7月、スポルティングへ移籍した。日本代表でも主力となっており、大卒の選手としてはほぼ理想的なキャリアを歩んでいる。

 ただ、スポルティングのチームメイトと比べるとどうか。守田とダブルボランチを組むウルグアイ代表マヌエル・ウガルテ(21)は母国クラブのアカデミーで育ち、15歳でトップチームからデビュー。19歳でポルトガルの小クラブへ移籍した後、20歳でスポルティングへ迎え入れられた。

 2人のチームへの貢献度は甲乙つけがたい。しかし現在の市場価格は守田が700万ユーロ(約10億円)で、ウガルテは1800万ユーロ(約25億円)。この違いはウガルテが6年早く守田と同じステージに達しているからだろうが、それは2人の資質の差ではなく日本とウルグアイの育成システムの違いによる部分が大きいのではないか。

 守田が高校、大学のチームでプレーしている間、ウガルテはすでにプロ選手としてのキャリアを着々と築いていた。守田が急行に乗っていたとすれば、ウガルテは特急に乗っていたのである。

合理的な選手育成システムから学べることはあるのでは

 Jリーグのクラブから見てもいくつかの課題を抱えている。

 1)選手を育てて売ることをビジネスとして確立すべき。

 2)18歳で入団した選手に試合経験を積ませて成長を促すべき。

 3)他クラブへの期限付き移籍をもっと積極的に行なって、選手の成長を促すべき。

 欧州、南米の強豪国は合理的な選手育成システムを確立し、世界トップレベルの逸材を次から次へと輩出している。

 日本の社会状況は、ヨーロッパとも南米とも異なるし、スポーツに打ち込みながら教育を受けられるという社会制度が確立されている。外国の選手育成システムをそのまま導入しても、なかなかうまくいかないだろう。しかしながら、日本の実情を考慮しつつ、世界トップの選手を育成するため、今こそ英知を集めて改革を断行するべきではないか。

 多くの日本のフットボール関係者にとって“革命的”、言葉を換えれば“無謀”とも思えるようなドラスティックな改革を成し遂げて初めて――「2050年までに優勝」という途方もない目標を達成する可能性が生まれるのではないか、と考えている。

#1からつづく>

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日本代表は「カタールW杯が史上最強」「予選で苦しむが“W杯だとアジア最強”。欧州・南米と比べて…」データで浮かぶ“世界での現在地”

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