- #1
- #2
Number ExBACK NUMBER
「わずか5分で570万円の損失が」それでも2カ月後には数百万円を…角界“野球賭博事件”の元力士が語る“賭博沼”の恐怖「水原さんの心境もわかる」
posted2024/04/25 17:30
text by
欠端大林Hiroki Kakehata
photograph by
Hitoki Kakehata
大相撲野球賭博事件で、震源地となった阿武松部屋(当時の親方は元関脇・益荒雄)に賭博を最初に持ち込んだのは、同部屋OBで元幕下力士の梓弓(本名=山本俊作)だった。
梓弓の父は、関西野球賭博の有名な胴元として知られていた。力士時代に築いた人間関係と信用、情報力で、野球賭博は瞬く間に角界の深部に広がっていったのである。
「違法賭博の胴元は暴力団であるという固定観念がありますが、それは違います。もちろんヤクザ直営の胴元もありますが、当時はカタギが運営して、暴力団員が客といったケースも多かった。胴元の鉄則は“客を殺さない”ことですから、たとえ借金が累積しても、すぐに追い込んだり、暴力でカネを回収するということはあり得ない。
むしろ熱くなっている客に、冷静さを取り戻すよう諭します。違法賭博の世界では、関与している全員が摘発されるリスクを共有しているため、事件を起こしては共倒れになると分かっているのです」
水原事件のナゾ「なぜ胴元はあれほどの金額まで受けたのか」
古市氏の場合、野球賭博1試合に賭けた最高金額は1000万円だった。もっとも、通常の野球賭博でこれだけの金額を胴元が受けることはまず、あり得ないという。
「“丁半バクチでテラ銭が1割”というシステムでは、試合に八百長でもない限り、客は勝てません。どうしても負けを取り返そうとすれば大きく張るしかないが、そういうイチかバチかの勝負は、たとえ相手が天下の横綱でも胴元は受けてくれない。
客が負けたときは回収できずに焦げ付くリスクがあり、勝った場合には支払いができなくなる可能性があります。水原さんの場合、どうして何十億円もの損失になるまで胴元が受け付けたのか。そこが分かりません」