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箱根駅伝2区で“運命の並走”、青学大・近藤&中大・吉居の出身クラブ恩師が明かす“TT兄弟“の関係性「幸太郎が大和をとにかく可愛がっていたんです」
posted2023/01/11 11:03
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
JMPA
戸塚駅から国道1号線を歩き箱根駅伝の戸塚中継所に向かうと、通過予定時刻の1時間前には多くの人が詰めかけていた。応援の自粛要請が3年ぶりにない中で実施された今年、“戸塚の壁”を上っていくとき、この大観衆の応援を受けてエースたちが駆け上がっていくのか。そう考えたら鼓動が高鳴った。
そして壮絶なラスト勝負は想像以上だった。いや、想像の範疇を優に超えていた。
田澤を抜き去った吉居の猛スピードの走り
箱根駅伝の花の2区は23.1km。エースたちが猛スピードで競り合いながら、13km付近から始まる権太坂と終盤3kmの上り坂に挑んでいく。そのためペース配分が非常に難しい区間だ。前半をぶっ飛ばすと、たいていの場合は“地獄”が待っている。これまでも多くの猛者が戸塚の壁で撃沈してきた。
当日変更で2区に投入された中大・吉居大和(3年)も当然、2区の難しさを知っていたが、果敢に切り込んでいく。それは前回、フラットコースの1区で区間記録を打ち立てたときのようなスピード感だった。
「区間新記録を狙ってやろうという気持ちもあったので、10kmまでは自分の予定していたペース通りというか、ちょっと遅いかなというくらいで行きました」
吉居は駒大・田澤廉(4年)の9秒遅れの5位でスタート。1km過ぎに追いつくと、前回の区間賞獲得者を引き離していく。3.2kmでトップに立ち、10kmを28分00秒で通過した。
14.3kmから始まった近藤と吉居の“夢の時間”
しかし、その後ペースが鈍りだす。12.2kmで田澤に並ばれると、遅れ始めた。後半のコースを考えると、大ピンチといえる状況だ。
14.3kmでは2秒遅れで走り出した青学大・近藤幸太郎(4年)に追いつかれた。このままズルズル後退するかと思われたが、吉居は“復活”を遂げることになる。近藤が左手で「ついてこいよ」と合図すると食らいついたのだ。
ここから近藤と吉居の“夢の時間”が始まることになる。