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箱根駅伝2区で“運命の並走”、青学大・近藤&中大・吉居の出身クラブ恩師が明かす“TT兄弟“の関係性「幸太郎が大和をとにかく可愛がっていたんです」
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byJMPA
posted2023/01/11 11:03
箱根駅伝2区、かつてチームメイトだった青学大・近藤幸太郎と中大・吉居大和による「運命的な並走」で田澤に迫る。この瞬間、2人を指導してきた恩師は…
「幸太郎君にも抜かれて、まずいかなと思ったんですけど、幸太郎君が『ついてこい!』というジェスチャーをくれたんです。本当に苦しかったんですが、後ろにつかせてもらって、何とか耐えることができました。権太坂の下りを走っているうちに、調子が戻ってきたというかしっかり動き始めたので、残り3kmを頑張りました」
大和なら抜けるなと思ったね。ラストのキレはモノが違う
2区の終盤3kmは歴代のエースたちを苦しめた難所が待ち構えている。仲井さんは、「田澤君の調子が悪そうだったから、大和なら抜けるなと思ったね。ラストのキレはちょっとモノが違う。あとは彼がどこでスパートをかけるのか」とタイミングを気にしていたという。
吉居は21kmからの下りを利用してアタック。近藤を引き離した。残り1kmで田澤との差は20mほど。3人の指揮官から最後のゲキが飛ぶ。吉居は後ろの近藤を気にしながら、前を追いかけた。
「自分は上りよりも下りの方がまだ得意かなと思っていたので、そこで田澤さんに追いつきたいと考えていたんです。ただ青学大と何秒離れていたのか分からなかった。幸太郎君より前で渡さないと区間賞はないので、最後は思いっきり行きました」
近藤もトップに迫り、3人のエースが交錯する。残り110mほどで、近藤の顔をチラッと見た吉居がラストスパート。近藤を突き放して、田澤の右側を一気に駆け抜けた。戸塚中継所に勢いよく飛び込むと、近藤は田澤とほぼ同時にタスキをつなげた。
激走の後、かつてのチームメイト2人は抱擁をかわす。近藤が左手で吉居の頭を撫でたシーンは本当の兄弟のように見えた。
吉居が区間歴代8位の1時間6分22秒で区間賞。近藤も同9位の1時間6分24秒で走破した。
区間賞争いで大和に2秒差で負けたのなら光栄です
「大和とは同じクラブチームでしたし、一緒に走れて、なんか幸せな気持ちでしたね。特に駆け引きがあったわけではないんですけど、苦しい中、一生懸命競り合って、高めていけた。監督からは1時間7分半でいいと言われていたので、タイムは想像以上でしたし、区間賞争いで大和に2秒差で負けたのなら光栄です」
年下に区間賞争いで敗れた近藤だが、清々しい表情を見せていた。一方の吉居も笑顔で取材に応じた。