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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
青木真也が語る「僕にしかできない終活」 39歳のベテランは、いかに格闘技を続けるのか?「主義主張を表に出すのは、命がけなんです」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/12/21 11:04
来年40歳となる青木真也に、自身の“引退”についての考えなどを聞いた
金の集まるところに人が集まり、競争が強まり、新陳代謝が激しくなる。「その資本主義みたいなものって、本当に人を豊かにするのかなという疑問があって」と青木。
「それに金がほしいから試合するとか、より金になるところで試合をするってなると、金にコントロールされてるわけでしょ。僕の価値観だと、それはしたくない。“稼がない選択”というのも必要なのかなと」
試合だから勝ち負けがある。より強い者が勝つ。勝つために努力をする。それは当然のこととして、負けた者は淘汰されるだけなのか。格闘技の道は、トップになる可能性がなくなった瞬間に閉ざされるしかないものなのか。
「格闘技の資本主義の渦に飲み込まれちゃうと、自分がやりたいことができなくなる気がして」
「イチローは“野球人”。僕も“格闘技者”でありたい」
青木がやりたいこと、それは単に勝ち負けを競うのではなく、「思想・信念・主義主張」をぶつけ合うことだ。青木はDDTを中心にプロレスの試合もしているが、“強さと闘い”を見せるという点で格闘技と違いはないと言う。それはアントニオ猪木がやってきたことだから、と。
「何かいい形を見つけたいんですよね。おぼろげながら見えているんですけど。僕にしかできない晩年の形、キャリアの作り方」
参考になるのは他の格闘家やプロレスラーではなく、イチローだという。
「イチローが“野球の探究者”と言ってたんですけど、僕は格闘技の探究をしていると思ってますね。試合するかしないかというのは大きいんだけど、でも一番大きいことではなくて。格闘技とどう向き合うか、どう探究していくか。イチローは現役選手ではないけど“野球人”じゃないですか。僕も格闘家、競技者というより“格闘技者”でありたい」
イチローは選手、監督やコーチという立場ではなく野球に携わっている。青木もセミナーを開催することはあるものの、ジム経営や選手育成には興味がないそうだ。その一方、最近も「勉強し直そうと思って」ブラジリアン柔術の選手とのスパーリングを願い出た。
「20代の(最前線の)選手と組み合うと、やっぱり面白いんですよ。僕から“今のどうやったの?”って聞いていろいろ教わることもあるし。ファイターの世代としては僕から3周くらいしてるんで、敬われちゃうくすぐったさはありますけどね。“僕のお父さんが青木さんのファンで”とか。俺も歳とったなって勝手に思わされちゃう。意外に辛いんですよ、これが(苦笑)」