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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
秋山戦に続いて復帰戦も完敗…“格闘技者”青木真也が敗戦後に明かしたこと「評価はありがたいけど、“客”に主導権は渡さない」
posted2022/12/21 11:03
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
ONE Championship
青木真也の2022年の格闘技戦績は、3戦3敗だった。グラップリング1敗、MMAで2敗。MMAマッチはどちらもパウンドによるTKO、レフェリーストップ負けだった。舞台は、シンガポールを中心にアジア各国でビッグイベントを開催するONE Championship。青木がこの団体と契約して、もう10年になる。
3月に対戦したのは秋山成勲。ONEの前の主戦場、日本のDREAM時代から敵対視してきた相手だ。いわば因縁の対決。ONEでの対戦が決まると、お互い赤裸々に感情をぶつけ合った。その“先制打”を放ったのは青木で、ケガで一度オファーを断った秋山を「虚構野郎」と痛烈に批判している。
この試合、青木は1ラウンドにバックを奪いタップアウト寸前まで追い込んだのだが、2ラウンドにパンチを浴び、大逆転を許した。痛恨の敗北だ。しかし彼の評価は下がらなかった。挑発合戦から試合後の涙まで、すべてをさらけ出す姿が支持されたのだ。「僕は全部賭ける、保険なしの試合をやってきた」と青木は言った。
「でも器じゃなかった。那須川天心や武尊とは違うんですよ、僕は」
ただ、仕事とはそういうものだろうとも考えていた。失敗する、恥をかく。それでもまた翌日は職場に行く。それが大人だ。そういう、働く人たちと自分のスタンスがシンクロするから、見る人に響くものがあるのではないかと青木は考えていた。
「朝倉未来なら受けないでしょう。これ、見出しに使って」
同時に、その“感動”のようなものを長引かせるつもりもなかった。秋山戦から2カ月、グラップリングでケイド・ルオトロと対戦して判定負け。そして11月19日、シンガポール・インドアスタジアム大会でのザイード・イザガクマエフ戦が決まった。
MMA復帰戦。当初は主催者サイドから「戦績を整えるような」マッチメイクでという打診があったそうだ。だが実際には、そうならなかった。イザガクマエフは23戦してわずか2敗、ONEでも連勝中と勢いのある選手。元UFC王者ハビブ・ヌルマゴメドフをリーダーに、さまざまな団体を席巻しているダゲスタン勢のメンバーだ。
ONEの頂点を目指して上り調子の強豪が“ベテラン食い”を狙う。そういうマッチメイクになった。リスクのある試合だ。青木は会見で「朝倉未来なら受けないでしょう。これ、見出しに使ってください」と笑った。試合後もこう振り返っている。
「最初の話と違ったから“えっ!?”とはなりましたよ。でもずっと“来た球を打つ”スタンスでやってますからね。べつに不満とかはなかった」