Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「切り替える」だけではダメな吉田麻也・三笘薫・鎌田大地ら“ミスの連続”… スペインとの“決勝”は「ドイツ戦前の気持ち」を持て
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/11/28 17:55
痛恨の失点に悔しさをにじませる吉田麻也。コスタリカ戦はチーム全体として、あまりにもミスが多かった
そこまで焦れずに少しずつコスタリカを押し込み、数字が表すようにカウンターすら許さない細心の注意でゲームを進めてきただけに、ショックは計り知れなかった。
試合後、選手たちからは「切り替えるしかない」という言葉が聞かれた。敗戦のショックを断ち切って気持ちを切り替え、スペイン戦に向かうのは大事なことだ。しかし、ミスはしっかりと受け止めなければならない。
イビチャ・オシムさんは常日頃から「ドンマイ」「切り替え」という、いかにも日本的な、責任の所在を曖昧にする言葉を嫌っていたという。曖昧にするから同じミスを何度も繰り返すのだ、と。
だから、この失点の過程はチーム内でしっかり追及し、共有しなければならない。スペイン戦で同じようなミスを犯さないためにも。
ゲーム自体は日本のプラン通りに進んでいた
一方、ゲーム自体は日本のプラン通りに進んだ。
「相手をゼロに抑えながら試合を進めていくという部分ではプラン通りだった。できれば我々が先制点を奪い、常に勝ち点3は目指すなかで、勝ち点1はしっかり掴み取れるように、勝ち点3へと持っていくというのが考えていたゲームプランだった」
この森保一監督の言葉は、勝ち点3が欲しいがために前がかりになり過ぎて失点することは避け、リスクマネジメントをしながら90分のなかで仕留めろ、という意味だろう。
前半は両チームがフレッシュな状態でボールが行ったり来たりして、互いにゲームをコントロールできなかったが、35分過ぎからペースが日本に傾き始める。
きっかけは、ドイツ戦に続いてシステム変更だった。
森保一監督がピッチサイドで指示を出し、4-2-3-1から長友佑都を3バックの左に据える3-4-2-1へと変更。5-2-3の相手との噛み合わせをはっきりさせて流れを手繰り寄せた。
後半に入ると、浅野拓磨、三笘、伊東純也と“決める人”たちを次々送り出し、カウンターをケアしながらサイド攻撃を中心に攻め込んでいく。失点後には南野拓実も投入したが、肝心のゴールが遠かった。
これだけゲームを支配しても、ミスが続いてしまえば
試合を終えてみれば、ミスしたシーンばかり思い浮かぶ。トラップミス、パスミス、ドリブルミス、キックミス、判断ミス……。これだけゲームを支配しているのに、これほどミスが続けば、ゴールまで辿り着くのは難しい。
暑さのせいなのか、初戦の疲労のせいなのか、W杯という大舞台によるプレッシャーのせいなのか。ドイツ戦に続き、この日もらしくないミスを連発した鎌田大地が敗戦の要因を振り返る。
「僕個人もチームとしても、イージーなミスがすごく多かった。僕はああいうミスをしてはいけない選手。あと、あれだけコンパクトにアグレッシブに守られると、僕たちだけじゃなく、どこの国の代表も苦戦していて。やっぱりこれが国を背負って戦うということだと思うし、W杯はどの試合も難しいものだなと感じています」
ミスを犯したのは、失点に絡んだ前述の5人だけではない。ボールロストを恐れ、仕掛けたり、縦パスを入れたりすることを躊躇うなど、チーム全体がナイーブだった。