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渡辺勇大が“驚きの告白”「(競技を)辞める選択肢もあった」五輪メダリストがナゼ?「赤字垂れ流しで、切り崩しながら…」“代表辞退”後の現在
posted2025/05/13 11:02

五輪2大会連続でメダルを獲得したバドミントンの渡辺勇大が、競技を取り巻く現在の環境や思いを明かした
text by

松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Shiro Miyake
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渡辺が明かす「日本代表を辞退」した理由
2025年1月、日本バドミントン協会はナショナルチームのメンバーを発表。その中に渡辺勇大と田口真彩の名前はなかった。落選したのではなく代表を辞退したことによるものだが、その背景には、協会の資金面の厳しさ、そのため代表選手といえども遠征にあたって自費を強いられる状況があった。
そこには2025年までの流れがある。
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東京五輪前と比べると、協会に対する国からの助成金自体が減っていた。加えて2022年、元職員による横領が発覚し、それに対するペナルティとしてさらに減額。2022年度、2023年度と赤字になったことで2024年度は黒字化を期して予算が編成された。そのため、パリ五輪を控えているにもかかわらず強化費は約8億円から約3億円へと大幅に削減された。
昨年6月には前日本代表の朴柱奉ヘッドコーチが、代表合宿が大幅に縮小されたことなども明かしている。
渡辺は選手をとりまくこうした環境の変化について、こう表現した。
「以前のようには活動できないとなったときに、もどかしいと思う選手はたくさんいたと思います」
強化費削減で起こった“自費遠征の増加”
一方でこう語る。
「僕自身は合宿をしたいタイプで、やっぱり高いレベルの選手が集まって練習できるのは自分自身のレベルアップにつながるし、日本全体のレベルアップにもつながるのでやっていきたいって思っていたんですけど、選手や企業の中でもいろいろな意見があって、合宿を減らしたいという企業さんや選手の皆さんもいました。そこに協会さんが乗っかったというのが正しいんじゃないかなと僕は思っています」
強化費削減により、パリ五輪後には選手が自費で海外遠征に出ざるを得ないケースが増えた。その影響を、渡辺は誰よりも実感することになった。実業団に所属する選手たちと違い、プロとして活動していたからだ。