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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「紛れもなく監督采配による勝利です」中村憲剛も唸ったドイツ戦“至極の一手”と、名将フリックの“誤算”とは「結果論にはなりますが…」
posted2022/11/26 17:51
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
11月23日のグループステージ初戦で、日本はドイツから歴史的な勝利を奪った。W杯プレーヤーの中村憲剛氏による分析の後編は、後半のシステム変更によるチームの変化に触れる。ドイツの選手交代に関する指摘も興味深い。(全2回の2回目/前編へ)
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前半の攻撃を振り返ると、日本の最終ラインの選手たちが、ビルドアップ時にかなり苦しんでいた印象でした。ドイツのボールを失ったところから即時奪回するプレスを受けて、パスコースがなくなり、蹴らされる。ドイツの守備がかなりハマっていました。ドイツの選手たちからすれば、後半も同じようにプレスをかければ良い。そう思っていたはずです。
しかし、冨安健洋を吉田麻也と長友佑都の間、左のCBに配置する3バックにしたことで、日本の最終ラインにドイツのプレッシャーが届かない選手が生まれます。それによって、少しずつ状況が変わっていきました。
冨安はギリギリまでパスコースを探して、そこへ正確にボールをつけることができます。前半ハマりにハマったドイツのプレスが、冨安が入ったことでちょっとずつ空転していき、日本が敵陣へ入る回数が格段に増えていきました。間違いなく前半とは違う光景が生まれました。これは痛快でした。後ろをひとり増やすことで、守備が決まるだけでなく攻撃にも少しずつ時間が生まれていったのです。
好守ともに整った“至極の一手”
ドイツの陣地に入っていくことができれば、失った瞬間に切り替えて奪いにいけます。それによって、ドイツから前半のようなビルドアップに余裕を持たせるための時間を削ることができます。相手に可変する時間を作らせず、GKのマヌエル・ノイアーに下げても二度追いで蹴らせ、苦し紛れに蹴ったボールを今度は日本が拾ってショートカウンターへ、という態勢が少しずつ増えていきました。
前半からかなり苦しんでいたマークもはっきりしました。前半のドイツはダビド・ラウム、ジャマル・ムシアラ、カイ・ハバーツ、トーマス・ミュラー、セルジュ・ニャブリが5レーンを意識したように立ち、日本の4バックのゾーン間でボールを受けてゴールに向かい、日本の守備陣に混乱を招いていました。それに対して5バックで彼らが使いたいスペースをまず埋めることで、役割が決まり日本の守備陣に迷いがなくなりました。