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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「紛れもなく監督采配による勝利です」中村憲剛も唸ったドイツ戦“至極の一手”と、名将フリックの“誤算”とは「結果論にはなりますが…」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2022/11/26 17:51
ドイツ代表のハンジ・フリック監督。チャンピオンズリーグ優勝経験を持つ名将だが、森保一監督率いる日本に「まさか」の逆転負けを喫した
守備というのは前からハメることも大切ですが、後ろの選手がまず相手をつかまえられないと、前の選手は思い切ってプレスへいけないものです。両ウイングバックを含めた5人が誰につくのかが決まり、ダブルボランチと2シャドーのところも決まり、システムチェンジと役割の明確化で躍動感が出ました。負けていたこともありますが、迷いなくプレスにいくことができるようになったのです。迷いなくかけるプレスは迫力が出ます。前半にはなかった「ボールを奪うイメージ」が、全員に共有されました。
冨安の左CB起用で、日本は攻守ともに整いました。まさしく“至極の一手”だったのです。
それでも日本の出方を見定めたドイツにプレスを剥がされ、同点に追いつくまでに失点を覚悟するような決定機を作られました。かなり際どい展開ではありましたが、ここでチームを救ったのがGK権田修一でした。
70分から71分にかけての4連続セーブで2点目を与えなかったことは、とてつもなく大きな価値がありました。ここがこの試合の分水嶺だったと思います。
中村憲剛が驚いたドイツの「2枚替え」
ドイツの心理を探ると、「日本が5枚にしてきたことでちょっとやりにくくなったけど、それでも崩せる。あとは点を決め切るだけ。勝てるな」という感じだったのではないかと思います。ただ、森保一監督はシステムを変更しただけでなく、そこからの選手交代がこれまでにないぐらいに速かった。僕ら日本人が驚いているのですから、ドイツ陣営が混乱したとしても無理はないでしょう。
矢継ぎ早に交代を行なっていった結果、最終的には1トップの浅野拓磨を頂点に南野拓実と堂安律が2シャドーに入り、伊東純也と三笘薫をウイングバックに置いて、鎌田大地がボランチの超攻撃的布陣になりました。3バックと遠藤航の4人で守り、6人で攻める。日本の選手たちにとっても「ほぼぶっつけ本番」の戦い方は、ドイツにとって明らかな想定外です。選手交代のたびに目の前の相手が変わっていくので、マークするべき相手を把握しきれなかったはずです。徐々にドイツが制御不能に陥っていきました。
さらに拍車をかけたのが、ドイツの選手交代でした。ドイツの1点リードで迎えた67分、ミュラーとイルカイ・ギュンドアンが下がりました。
個人的にこの交代は驚きました。彼らふたりはチームの羅針盤的存在です。チーム全体に影響をもたらすふたりが、同時にピッチをあとにしたのです。