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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
なぜ森保監督は前半のうちに動かなかったのか? 中村憲剛がドイツ戦を徹底解説「もし動いてしまったら…」「待つのは大きな賭けでした」
posted2022/11/26 17:50
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
日本代表としてW杯のピッチに立った中村憲剛氏をして「最上級のエンターテインメント」と言わしめた、W杯の歴史に残る大逆転劇だった。
11月23日に行なわれたドイツ戦である。
前半の4-2-3-1は、なぜ機能しなかったのか。
後半の3-4-2-1は、なぜ機能したのか。
そして、勝利を手繰り寄せるポイントとなったのは?
慧眼の日本代表OBに、世界が驚いた日本の勝利を読み解いてもらおう。(全2回の1回目/後編へ)
◆◆◆
前半の日本は、いままでに見たことがないレベルで攻守に圧倒されました。森保一監督のもとでこれまで積み重ねてきたものが、まったくと言っていいほど表現できなかった。初戦の緊張感があったのか、雰囲気にのまれたのか、ドイツをリスペクトし過ぎていたのか。いずれにせよ、いつもの姿を失っているように見えました。
大苦戦の前半「狙い通りに奪えたシーンは…」
システムを4-2-3-1へ戻した9月の戦いで、日本は3ラインをコンパクトにしたハイプレスをコンセプトの柱に据え、チームの共通理解を図ってきました。ところが、その3ラインのコンパクトさが、前半開始から時間を経たずして保てなくなっていきました。守備の局面では1トップの前田大然とトップ下の鎌田大地がツートップ気味に横並びになり、相手CBに制限をかけるのですが、彼らが出ていっても後方が連動できる回数が減っていきました。
鎌田と前田が前からプレスを仕掛けるなら、中盤から最終ラインも同じように押し上げないと、とくにダブルボランチの遠藤航と田中碧の周りのスペースが空いてしまいます。9月23日のアメリカ戦では前からのプレスに合わせて中盤と最終ラインが連動し、3ラインをコンパクトにすることで、とくに中盤でボールを奪いショートカウンターで得点を狙う形を多く作れてきたのですが、そうやって狙い通りに奪えたシーンは1回か、2回か……数えるくらいしかありませんでした。
また、守備のスイッチの迫力においても、アメリカ戦とはかなり違いました。ドイツの選手はプレスの迫力と圧力を、そこまで感じなかったのではないでしょうか。彼らからすればよほどではない限り、パスコースを絶えず見つけられる状態でした。