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「この試合に価値はない」カナダ戦を一刀両断したトルシエが、それでも気にした「違いを作り出せる」選手とは?《W杯日本代表を斬る》
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/11/19 06:00
試合には敗れたものの、前半8分の相馬の先制点は背後からの浮き球に合わせた見事なゴールだった
私が思うに久保は、試合を始められる選手だ。とても興味深いし、同時に彼は試合を終えることもできる(交代出場で試合の結果を維持する。あるいは逆転して勝利をおさめる)。今は日本に負傷者が多く、それがひとつの理由となってカナダに敗れたのは残念だった。敗北は精神衛生上いいとはいえない。これが大会前の最後の試合か?
——そうです。1週間後がドイツ戦です。
トルシエ この試合のことは即座に忘れるべきだ。
「実質的な代表選手」とは?
——しかしトラウマの残る試合という印象もありません。あなたが言うように、準備段階でのいち試合に過ぎなかったという感じですから。結果は重要ではないし、試合内容に満足できなくとも、あなたが語ったように森保監督はサブの選手たちにプレーの時間を与えたのだから。そしてその選手たちの間にも明らかな違いがありました。そうしたことが分かったのではないですか?
トルシエ それは明らかだ。これまでも述べているように、実質的な日本代表は14~15人だ。それが最大限で、続く選手たちは若く経験不足でいまだ成熟していない。DFラインも中盤もごく平均的だ。今日のチームでドイツに勝つことは絶対に不可能だ。
繰り返すが分析が難しい試合であり、分析が意味をなさない試合でもある。戦術的に何が良くて何が悪かったか、試合のシナリオや戦略の評価、チームとしてどこが弱点でどこが長所だったかなどを分析することに意味がない。それがカナダ戦の私の印象だ。
この試合のことは即座に忘れるべきだ。戦術面での意味は何もなく、代表でプレーする機会が存分になかった選手たちにプレーの時間を与えた。その点だけが評価できる。だからこそこの試合のことは忘れて、来るべきドイツ戦にすべてを集中するべきだ。
——ドイツ戦へのアプローチは、今日の試合とはまったく異なるわけですね。
トルシエ その通りで、ドイツ戦までは1週間ある。今日は町野(修斗)と合流が遅れた選手を除き、代表のすべての選手がプレーした。誰もがドイツ戦に向けて準備を始めたが、それはこれまでとは別の結びつき方でまとまっているグループの話だ。モチベーションも高い。
再び繰り返すが、この試合を分析しても意味はない。この試合から言えることは何もない。プレー時間以外は。
——わかりました。メルシー、フィリップ。