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「本当に大丈夫なのか?」宇佐美貴史は安堵、昌子源は涙…ガンバ大阪が“弱者のサッカー”で手にしたJ1残留のドラマをカメラマンが激写
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/11/07 17:03
11月5日の鹿島戦後、安堵の表情を浮かべるガンバ大阪の宇佐美貴史。アキレス腱断裂からの復帰後、チームは2勝2分とJ1残留の原動力となった
昌子源は「苦しかった」と涙
今シーズンのガンバは上手くいかないことだらけだった。片野坂知宏前監督が「私が培ってきた経験や情熱の全てを捧げ、皆さまに喜んでいただける、応援をしたくなる最強のチーム作りをしていきたい」と就任したものの、理想的な補強をすることができず、シーズン序盤には東口や宇佐美、倉田秋といったチームの核となる存在が離脱。チームを成熟させていくよりも、どう立て直していくか、というスタートになってしまった。自分たちのスタイルを手に入れて能動的に相手を上回る、という当初の予定は崩れ、試合ごとに受動的に相手に対応することが最優先事項にならざるをえなかった。
上昇の兆しが全くなかったわけではなかった。4月には2日の名古屋戦に勝利すると、6日の京都戦では引き分けに終わったものの新戦力のダワンが齊藤未月とのダブルボランチで躍動。新型コロナウイルスの感染による離脱も多い中、5月には神戸と柏に連勝も記録した。しかし、多数の離脱者と過密日程が重なった中でやりくりを続けるチームは安定するには至らず下位に沈んだ。
8月14日にはホームで残留を争う清水に敗れ、片野坂監督を解任。松田新監督のもと、残留だけを目指して戦うことになった。新体制の初陣となった広島戦こそ2-5で落としたものの、名古屋戦、福岡戦と完封で連勝。守備の安定がついに実現したが、9月18日、神戸との残留争いの大一番では大迫勇也がハイパフォーマンスを見せ敗戦。いよいよ降格が現実味を帯びてきた。
しかし、ガンバはそこから盛り返した。10月の3試合を2勝1分で乗り切り勝ち点を積み重ね、鹿島との最終戦を15位で迎えることになった。
4-4-2で割り切った戦い方を我慢強く実現できるようになったが、それだけが理由ではない。“弱者のサッカー”を遂行するだけでは、最後の最後まで我慢しきることは難しかっただろう。鹿島戦後、フラッシュインタビューで昌子は「苦しかった」と涙を見せた。残留争いの最後に待ち構えている壮絶なプレッシャーの中で、本当に「我慢するだけ」だったのならば、選手たちは果たして耐えきることができただろうか。
ガンバには、自分たちがどんなに苦しい状況になっても希望を感じることができる存在が必要だった。