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「本当に大丈夫なのか?」宇佐美貴史は安堵、昌子源は涙…ガンバ大阪が“弱者のサッカー”で手にしたJ1残留のドラマをカメラマンが激写 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2022/11/07 17:03

「本当に大丈夫なのか?」宇佐美貴史は安堵、昌子源は涙…ガンバ大阪が“弱者のサッカー”で手にしたJ1残留のドラマをカメラマンが激写<Number Web> photograph by Masashi Hara

11月5日の鹿島戦後、安堵の表情を浮かべるガンバ大阪の宇佐美貴史。アキレス腱断裂からの復帰後、チームは2勝2分とJ1残留の原動力となった

松田監督「自動降格だけは避けなければ、と…」

 本当に大丈夫なのか?

 外から見ている人間がそう思うのであれば、ピッチ内にはより強い疑念があってもおかしくはない。この試合を前に松田浩監督は「人生の99.9%の心配が無駄なこと、と言われている」とも語っていたが、これだけの大一番で、心配するなというのは難しい話だろう。

 指揮官は「選手たちも(他が)気になっていた」と試合後に明かしている。ピッチに他会場の情報が伝えられたのは「最後の10分を過ぎてから」(松田監督)だった。それでも、京都はいまだにスコアレス、清水は相変わらず激しい打ち合い。他会場のスコアは依然として先行き不透明なものだった。アディショナルタイムに突入して試合終了が近づくと、黒川圭介やパトリックがベンチと改めて言葉を交わしていた。

 試合は0-0で終わり、ガンバはひとまず自動降格を回避することに成功。あとは京都の結果次第で残留が決まる。ピッチで最後の整列が行われている中、ベンチ前ではスタッフも選手たちもタブレットを囲んでいた。

 鹿島の最終戦セレモニーが予定されていたが、なかなかガンバの行く末が確定しない。「とりあえずサポーターへの挨拶を」とスタッフが促しても、当然選手たちが気になるのは他会場の結果だ。選手たちはベンチの方をちらちらと見ながらサポーターの前に移動したが、やはりそのまま挨拶するわけにはいかなかった。その場にしばらくとどまり、静かに祈るしかない。サポーターも手中のスマートフォンに目を向けていた。

 4分と表示されていた後半のアディショナルタイムと同じくらい長く感じる時間が経ったころ、三浦弦太が両手を合わせて結果を待っている様子を撮影していると、突然歓声が上がった。京都が引き分けに終わり、ガンバのJ1残留が決定したのだ。パトリックが叫び、アラーノが目を潤ませながらサポーターを煽る。鹿島サポーターからも拍手が起こる中、ガンバサポーターから「松田オレ!」のチャントが響くと、共に苦しい状況でガンバにやってきた松田監督とアラーノが静かに抱擁を交わした。

 パトリックへの放り込みから始まり、最後は攻撃を受け続けながらも時間を稼ぎ引き分けを手にした。苦しんだシーズンの最後に見せたのはあまりにもガンバらしくない“弱者のサッカー”だった。しかし、それよりも結果が全ての日だった。松田監督は「勝てれば理想的でしたけど、勝ち点1が入ればプレーオフは保証されます。今日すんなり(残留が)決まらなくても、苦労はするけれど自動降格だけは避けなければいけない、という思いがありました」と語った。

【次ページ】 昌子源は「苦しかった」と涙

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