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「分かります? 着てもないものに熱くなれない」鈴木優磨(26歳)が日本代表より愛する鹿島で果たしたい“義務”と“ハセさん超え”
posted2022/11/04 17:02
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph by
J.LEAGUE
今から約2年前、鈴木優磨は絶望の淵にいた。これまでのすべてを否定しないと生き残れなかった。2019年から約2年半をベルギー・シントトロイデンでプレーしたときのことだ。
「やっぱりデカい選手が多くてなかなか体を当てながらキープできないなか、相手がさわれないようなキープの仕方というのはものすごく学んだし、実際に成長できたと思う。工夫しないとやれなかった。日本と同じスタイルではやっていけない。少しずつ変化を与えていって、それがうまくいったと思っている」
練習から怒鳴られまくった。そんな経験は初めてのことだった。
「お前よりデカくて強い選手はいっぱいいる。今のままでは厳しい」
ピーター・マース監督からハッキリと言われた。パス1本、キック1つから、なぜそうしたのかを詰められた。それも監督就任初日の練習から。
「初日にいきなり、足の裏を使ってボールを取られたら、ピーって止められて。『おまえはメッシか!』って、みんなの前で怒鳴られた。あとはアウトサイドで出すパスもめちゃくちゃに怒られた。『インサイドでちゃんと正確に出せ!』って。とにかく選手をリラックスさせない。常にプレッシャーを与える監督だった」
「日本に帰りたくもなった。でもね……」
メンタル面で追い込まれたのは、そのときがピークだったと振り返る。
「その監督になったときはヤバかった、本当に。練習中から終わった後も、毎日ボロカスに言われて怒鳴られまくった。ミスに対してすごく厳しい監督で、毎日ふざけんなと思っていたし、本当にやめたくなったし、日本に帰りたくもなった。でもね……」
ふと笑顔になって振り返る。今だからこその言葉が続く。
「ピーター・マース監督になってから、たしかに自分のプレーがどんどん良くなっていった。最終的にはその監督のもとで20試合に出場して12、13点取った。シーズンが終わる頃には、『彼のおかげ』と言えるようになっていた。あのやり方は俺に合っていたんだと思う」
力を引き出してくれる指揮官と出会い、ベルギーリーグで2020-2021シーズンは17ゴールという結果を残した。
「この成功体験は大きかった。だからこそステップアップしたかった。もうたぶん2度とこのクラブでは17点も取れないし、正直、“いろいろなことが重なった奇跡”だとも感じていた。だからこそ俺のなかでは、このタイミングで移籍できなかったら本当に終わりだと思っていた」