しんみりとした雰囲気を振り払うように、能見は試合後の取材で開口一番に言った。

「最後じゃないで、まだ」

　引退セレモニーは行なったが、決して引退試合ではない。

「選手兼任なので。コロナとか、何があるかわからないので、投げる投げないは別にして、しっかりと準備はしないといけない」

　山岡とのキャッチボールもまだ続く。山岡はこう語っていた。

「キャッチボール相手としては、残り少ないと思うんで、そこは大事にしていきたいなと思っています」

試合後のセレモニーで能見篤史。山岡、山本、宮城らチームを支える投手陣の相談役として信頼を寄せられていた（22年9月30日）　©︎JIJI PRESS

　10月20日に発表された、日本シリーズの出場資格者名簿40人の中に、能見の名前もあった。

　昨年の日本シリーズでは、第6戦の延長11回に登板し、ヤクルトの4番・村上宗隆をレフトフライに打ち取った。

　能見自身は、「投げたいというのは僕の中ではそんなにない」と言うが、つい思ってしまう。

　マウンドでのあの勇姿を、最後にもう一度。

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