猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス山岡泰輔が“能見さん”にキャッチボールを頼んだ理由「残り少ないと思うんで、大事にしていきたい」日本シリーズで現役最後の登板も
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph bySankei Shimbun
posted2022/10/25 11:03
今季限りでの現役引退を発表したオリックス能見篤史(43歳)。兼任コーチとして加入した2年間で、山岡泰輔(左・27歳)ら多くの後輩たちに慕われる存在になった(写真は3月の宮崎キャンプ)
山岡は昨年9月に右肘のクリーニング手術を受け、昨年の日本シリーズではリリーフとして登板を果たしたが、今季、先発として本格復帰した。前半戦はコントロールや変化球が冴え、山本由伸と防御率のリーグトップを争っていた。6月24日のロッテ戦では108球、被安打4で、4年ぶりの完封勝利も挙げた。
だが8月以降、感覚のズレに苦しむ。浮いたボールを打たれる場面が増え、9月22日のロッテ戦では6失点して4回途中でマウンドを降りた。優勝争いの中、翌日、登録を抹消された。
次にチャンスがあるとすればCS。そこに向けて、山岡は一軍に帯同しながら必死にもがいていた。
「監督には、『あがけ。とにかくあがいて、最後、いいとこ取りしろ』と言われたので、とにかくあがいて、直すというか、戻るきっかけをつかまないと。時間がない中、なんとかそのきっかけを、能見さんや、厚澤さん(和幸投手コーチ)と探しています。なんとなく良くはなってきているから、あともうちょっとのところだと思う」
そしてソフトバンクとのCSファイナルステージ第4戦で先発登板。初回、先頭の三森大貴を得意のスライダーで追い込むと、インコースをえぐる150キロのストレートで見逃し三振に取る。150キロを計測したのは久しぶり。スピードも変化球のキレも、明らかに以前とは違っていた。
3番・牧原大成からスライダーで空振り三振を奪い、三者凡退に抑えると、山岡は珍しく、荒々しくグラブを叩いて吠えた。
能見「今年一番よかったと思います」
4回に打球が左ふくらはぎに当たったこともあり、5回からは継投に入ったが、山岡は4回2安打無失点の気迫あふれる投球で勝利への道筋を作った。
「まあよかったと思います。0だったし。感覚的にも悪くなかった、よかったと思います。1イニング1イニングという気持ちで、短期決戦なんで行けるところまで行こうというつもりで投げました。こうなってるよとか、これやったらいいんじゃないかとか、きっかけは、厚澤さんにも、能見さんにも、たくさんもらいました」
毎日キャッチボールと会話を重ねていた能見は試合後、こう讃えた。
「今年一番よかったと思います。集中もしていたし。不安もあったでしょうけど、自分のできることをしっかりやろうというのが見えましたし、しっかりと攻めていってくれていたので、十分です。ここ最近、(キャッチボールでも)ボールの強さというのがどんどん出てきていた。ずっと状態が上がらなかった中、しっかり投げ込んだり、本人がいろいろ自分で試行錯誤してそこにたどり着いたので、それは本人の努力の結果だと思います」