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「巨人は2位指名も高校生スラッガーを狙う」「カープは3位指名で“5年後の前田健太”」ドラフト全指名予想《広島・楽天・巨人編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2022/10/19 11:05
ドラフト目玉候補の西村瑠伊斗外野手兼投手(京都外大西高・178cm75kg)
1位表明をする狙いは、同じ選手の1位指名を考えている他球団を撤退させるため。今年は多数球団が1位指名しそうな「ビッグネーム」が見当たらず、競合があっても少数球団同士の競合が予想される。
たとえば、5球団が競合するようなビッグネームがいる場合、1位表明によって1球団が下りたとしても、確率20%が25%になるだけでたいした効果にならない。
ところが3球団競合の選手で1球団下りれば、確率33%が一気に50%になり、2球団競合だった場合に、片方の1位表明によって片方が下りたら一本釣りだ。1位指名公表の効果はデカい。
毎年、支配下ドラフトでも育成ドラフトでも、たくさんの選手を獲得しているのに、なぜそうなってしまったのか……今の巨人の「野手」には、イキのいい若手が見当たらない。25歳以下ぐらいの若い選手はいるが、みんな大人しくて、浅野選手がキラキラ見えるのはわかるような気がする。
ストライクゾーンで勝負してこない相手ばかりなのに、打ってヒットやホームランになるボールだけをひたすら待って、失投をジャストミートで長打にする。誘い球を追いかけないから、頭が動かない。ジャストミートの精度が抜けているわけだ。
盗塁できる快足に、ライト定位置から三塁、本塁にダイレクトの猛肩。ホームランバッターのように伝えられているが、ライナー性の長打力で、本質的にはスリーベースヒッター。さらにトレーニングを重ねれば「トリプル3」の未来が見えてくる。
巨人は2位指名も高校生スラッガー
浅野翔吾を「1人」にしないために、抜群のバッティング技術を持った高校生スラッガーをもう1人。
2位・西村瑠伊斗(京都外大西高)は、内角の140キロ台前半をスパッとさばける天才性を持つ。タイミングを崩されても、軸をスッと前後にずらしてミートポイントを作ってしまう「とっさ力」。丸佳浩選手の千葉経大付高当時が、ちょうどこうだった。会心のスイングでのヒットは2、3割と言われるプロ野球には絶対必要条件だ。
50m6秒そこそこの俊足に、高校ではエースとして140キロ前後で投げた強肩と体のパワー。将来のレギュラー外野手の資格ありだ。
4位で3人目の外野手・萩尾匡也(慶應義塾大)を指名したのは、「外野手」に退団者が多数出たこともある。守備も打撃も、いつも全力疾走。外向きのエネルギーで快活なプレースタイルがいい。崩されそうになりながら、とっさに柔軟なハンドリングで放り込んでしまうのは、「センターから右」の意識がインサイドアウトのスイング軌道を作らせているから。無論、神宮のライトスタンドに持っていった場面も目撃している。4年生になっても、フレッシュさを失わずに「野球」が伸び続けている。
3位・益田武尚(東京ガス)、5位・仲地礼亜(沖縄大)……空振りの奪える速球と変化球を持っている投手、つまり、ここ一番で三振を奪える投手だ。今の巨人中継ぎ陣にいないタイプを2枚。出番は、意外と早いぞ!
6位・草野陽斗(東日本国際大昌平高)は、今春の段階で150キロを頻繁に投げたパワーピッチャー。高校入学時に、すでに130キロを投げており、「150キロクリア」を目標に、懸命なトレーニングを繰り返して、体重も20キロ以上増やしながら、実現にこぎ着けた。
入学時から草野投手を手塩にかけて育てた同高・伊藤博康監督は元・巨人外野手。東北福祉大当時は4番打者として活躍。そのチームで5番を打っていたのが広島、阪神で大活躍した金本知憲選手(元阪神監督)だった。
<西武・阪神・ホークス編へ続く>