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「巨人は2位指名も高校生スラッガーを狙う」「カープは3位指名で“5年後の前田健太”」ドラフト全指名予想《広島・楽天・巨人編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2022/10/19 11:05
ドラフト目玉候補の西村瑠伊斗外野手兼投手(京都外大西高・178cm75kg)
大きい選手はおとなしいのがよくある話だが、古川雄大のガッツは、ある種の「狂気」を帯びる。ベース際のスライディングの激しさ、左中間、右中間でもダイビングキャッチ……50m6秒そこそこ、ライナー軌道で80m近く投げる鉄砲肩をフルに活用する。弾丸ライナーでスタンドに叩き込む痛快な長打力も、偉大な先輩の高校時代を思い出す。
カープで佐伯鶴城高といえば、阿南準郎監督に野村謙二郎監督、廣瀬純外野手……カープの一時代を支えた人材を輩出した高校であり、同高の渡辺正雄監督は前任校・大分商高で森下暢仁投手を指導した方。何かと「カープ」と縁のある高校である。
今年のドラフトだけで「前田健太」までは、正直、無理だろうと思っていたら、3位で齋藤響介(盛岡中央高)が残っていたのは、今ドラフト最大の収穫と言ってよい。 前田健太投手は184cmほどあったから、ひと回り小さいが、イキのよい投げっぷりはそのまま重なって見える。
齋藤の「この夏」は圧巻だった。何球か150キロをクリアした快速球で押しまくり、カットボールも130キロ後半。ホームベース上でキレて1試合19奪三振をマークすると、あの花巻東高すら撃破してみせた。
しなやかでスピード感抜群の腕の振り、跳ねるようなキレ味のフィニッシュ……今年は、北海道・東北担当、近藤芳久スカウト(元・投手)が忙しい。じつは「2位」で古川雄大と、どちらにしようか迷ったほどの選手だ。
5位指名であの奄美大島のサウスポー
3位は「マエケン」と決まっていたから、4位で巡り会えるとは奇跡に近い。早く出てくるとすれば、古川雄大より、4位・内田湘大(利根商高)ではないか。
この選手、打者としてはとんでもない打球スピードと長打力を持ち、投げても140キロ前半のスピードを出せて、しかも「形」がいい。打席に立たせれば「打者」になりきるし、マウンドに送れば「投手」になりきれる。すでにプロ級のパワーを持ちながら、野球センスもすばらしい「野球上手」だ。
3年目・玉村昇悟が来季一軍に定着してしまえば、ファームのサウスポーは新家颯だけ。5位・大野稼頭央(大島高)のイキの良さも「新生・新井カープ」にピッタリだ。
奄美大島で育って、自然の中で培われた柔軟性やしなやかな強さを、投打にフルに発揮。ハツラツとしたプレースタイルは胸がスッとする。
とはいえ「夢」ばかり語っているわけにもいかない。来季の「手当て」として、バッティングがキラリと光る右打ちの内野手を一枚。6位・平良竜哉(NTT西日本)も外向きのエネルギー炸裂の「太陽の子」だ。
ちょっと強引なバッティングだが、これだけ振られたら、バッテリーは怖い。粗っぽさもあるが、プロではこういう選手が「想定外」の仕事をして驚かせてくれるのだ。
本職は「二塁手」。足も使えるし、併殺時の送球に見せる猛肩も、あの勢いなら一塁塁審も手を上げたくなるはずだ。バッテリーにとって、こんなにありがたいものはない。