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「最後の舞台にふさわしい敗北だった」フェデラーはなぜレーバー・カップを引退試合に選んだ?「僕は幽霊になるわけじゃない(笑)」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2022/09/27 17:01
引退試合後には涙を見せたフェデラー。ファンの想像を上回る感動的なラストシーンとなった
テニス界の未来へ思いを託したレーバー・カップ
「僕たちは普段、それぞれ個人でランキングポイントのため、賞金のため、自分の名を残すために戦っている。そんな僕たちがチームメートとして1週間をともに過ごし、お互いにサポートし合えることは貴重な機会になる。戦術面でもアドバイスをし合うから、他の選手が何を考えながらプレーしているかを知ることができるのは楽しいし、レジェンドたちが若い世代に昔の話や知恵を語る場でもある」
フェデラーたちがこの大会の開催を伝えるために記者会見を行ったのは2016年8月。フェデラーはまだランキング3位にいたが、膝の手術とリハビリのため、年内の全ての大会を欠場すると発表したばかりだった。もう全盛期とはいえず、2012年のウィンブルドンを最後にグランドスラムの優勝からは遠ざかっていた。その時期にフェデラーは自身の復活のみに目を向けるのではなく、その先のテニス界を見据えて動き出していたのだ。
「あとの時代にレガシーを残したいんだ。僕個人のではなく、テニスというスポーツのね。今の若い選手たちも、レジェンドたちももっと世の中に知ってもらいたい。彼らにも、テニスにもその価値があるから」
ヨーロッパ選抜対世界選抜という対決の構図にも大きな意味があった。世界選抜とは、つまり非ヨーロッパ選抜だ。男子テニスはもう長年、ヨーロッパの選手が上位を占めている。<ビッグ4>が全員ヨーロッパの選手なのだからそれも当然の話だが、2015年に錦織圭がツアーファイナルズに出場したときも、8人中、ヨーロッパ以外の選手は錦織たったひとりだった。今もトップ10の中にヨーロッパ以外の国の選手はひとりもいない。12位にようやくアメリカのテイラー・フリッツがいて、その下にカナダのフェリックス・オジェアリアシムが続く。