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「最後の舞台にふさわしい敗北だった」フェデラーはなぜレーバー・カップを引退試合に選んだ?「僕は幽霊になるわけじゃない(笑)」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2022/09/27 17:01
引退試合後には涙を見せたフェデラー。ファンの想像を上回る感動的なラストシーンとなった
ラストマッチは“フェダル”ペアで
北米も南米もアジアの選手たちもこの現状を打破するためにもっと奮起して、台頭してくればテニスは世界的にもっとおもしろくなるし、ファンの興味も惹きつけることができる。大陸間の勢力のバランスが、世界ツアーを今後も繁栄させていくためには重要だ。
「まずは選手たちが興味を持ってくれるかどうかが大会の成功のカギだった」とフェデラーは発足当時を振り返る。真っ先に賛同して参加を表明したのがナダルだった。これでもう半ば成功に向けて走り出したようなものだった。その年にいきなりナダルとのダブルスが実現し、話題沸騰となった。
今回のドリームペアの実現はそのとき以来となる。ファンが望んだ通りのラストシーンとはならず、“フェダル”はフランシス・ティアフォーとジャック・ソックのアメリカ・ペアにマッチタイブレークで敗れた。さらに、3日間の熱闘の末、これまで一度も負けていないチーム・ヨーロッパが敗れるという予想外の結末を迎えた。昨年はダブルスの1勝しかできなかったチーム・ワールドの大躍進だ。
よりによってフェデラーのラストマッチで——。がっかりしたファンも多いかもしれないが、これもレーバー・カップが目指したところに着実に進んでいる証と思えば、まさにフェデラーの最後の舞台にふさわしかったのだろう。
フェデラーは初日の夜に敗れたあともチームメートたちをサポートし続けた。ベンチの後ろから伝えるアドバイスに、選手はもちろんテレビの視聴者たちまで一言も聞き漏らすものかと耳を傾けた。2日目のオープニングマッチでオジェアリアシムを破ってチームに貢献したイタリアのマテオ・ベレッティーニは、勝利後のオンコートインタビューで照れ臭そうにこんな話をした。