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「たとえ今日僕が負けたとしても君のために喜べた」フェデラーとナダルの美しい18年間の友情物語「ロジャーは誰よりもエレガント」

posted2022/09/23 17:01

 
「たとえ今日僕が負けたとしても君のために喜べた」フェデラーとナダルの美しい18年間の友情物語「ロジャーは誰よりもエレガント」<Number Web> photograph by Getty Images

2020年、南アフリカでのチャリティーマッチに登場したフェデラー(右)とナダル。二人の美しきライバル関係はいつから始まったのか

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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 テニス界の至高の存在と呼ばれたロジャー・フェデラーが9月15日、自らの言葉で、声で、引退を表明した。

「僕は地球上でもっとも幸運な人間のひとりだと思っている」

「スイスの幼いボールキッドの夢を応援してくれた世界中の全ての人々に、心からの感謝を伝えたい」

長年に渡る宿命のライバル——ラファエル・ナダルはすぐに反応した。

この日が永遠に来なければいいのにと願っていた

「この日が永遠に来なければいいのにと願っていた。僕個人としても、世界中のスポーツ界にとってもとても悲しい日になった。君とこれまでの長い年月を分かち合えたことをうれしく、また名誉であり特権だったと感じている」

 対戦成績はフェデラーから見て16勝24敗。その数字だけ見れば、フェデラー対ノバク・ジョコビッチの23勝27敗、ナダル対ジョコビッチの29勝30敗のほうが拮抗している。しかし、フェデラーとナダルの対決には数字では表せない<美>があった。見事なコントラストをなすキャラクターとプレースタイル。そのどちらも二つとない魅力を放つ最高級品だった。

彼だけが違う“リーグ”にいる

 そのライバル物語は2004年3月——フェデラー22歳、ナダル17歳のときに始まった。しかしもっと前から、少なくともナダルの意識の中では始まっていた。ナダルの叔父でありコーチだったトニはずっとこう言い続けてきた。

「ロジャーにかなう選手はいない。完璧なプレーヤーなんだ。彼だけが違う“リーグ”にいる。だからラファ、お前がそのリーグに入るんだ」

 初めてネットをはさんだとき、フェデラーは前の月にナンバーワンになったばかりで、ナダルはランキング急上昇中とはいえまだ34位にすぎなかった。しかし、長髪にカプリパンツという野性味あふれるレフティーは旬の新王者を6-3 6-3で打ち負かした。そのときのフェデラーは発熱で体調が万全でなかったというが、それを言い訳にできたのは次に対戦するまでの1年間だけだろう。

 1年後の同じマイアミの決勝で、フェデラーは2セットダウンからなんとか逆転勝ちをおさめたが、その2カ月後の全仏オープンから翌年の全仏オープンまでナダルが5連勝。その間にフェデラーはナダルへの苦手意識を語っている。

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